2011/10/08

変化していく常識

胃底腺ポリープ(FGP)の説明をしても納得しない素人さんは放っておく事にしています。

FGPを持つ当事者は必死で我々の説明を理解しようとし、最後にはなんとか理解して安堵するのですが、FGPを持たない家族がFGPを持つ家族に関して説明を受けているときの一種の冷たさ(「とかいってやっぱりFGPも癌になるんでしょ」的なはなから理解しようとしていない態度)を神様が見ると、私が当事者を安心させようと必死に説明している姿が極めて滑稽に見えるだろうと思います。

思う事は二つ。
家族の病気に関する説明こそ、自分の偏見を捨てて聞いて下さい。
FGPは絶対癌にならないし、FGPがある胃は癌になりにくい。検診の診断をしている先生方は肝に銘じて下さい。

さて、ピロリ菌がいない、萎縮がC-1の胃粘膜を持つ女性の6割では簡単にFGPが見つかり、インジゴカルミンを散布すればさらに小さなFGPの芽が見つかります。

すると私の興味はFGPから次へと移ります。すなわち、
「萎縮もない、ピロリ菌もいない、それなのにFGPがないって、どういうこと?」
と。FGPが無いことの方が、普通ではないのです。

例えば今日、久々にそういう胃を見たのですが、なかなか解釈が難しいです。
FGPが無いと言うことは、
1)胃酸分泌が萎縮がないにもかかわらず、少ないのだろう。
2)もしかしたらガストリンのレベルが低いのだろう。
3)女性ホルモンの分泌量が少ないのかも知れない。
4)あるいはすべて。
を考えます。
従って、
A)逆流性食道炎のような所見は少ないのではないか。
B)十二指腸の異所性胃粘膜も目立たないのではないか。
C)前庭部胃炎がNSAIDSなどで起きてはいないか。
D)月経は正常か。
などを考慮しつつ問診や検査を進めていきます。

食道胃接合部を見ると粘膜の色調変化がほとんどありませんのでA)の仮説は正しそうです。
十二指腸球部にも発赤はまるでなく、B)の仮説も正しそうです。
胃底腺と前庭腺の境界部は・・・どうでしょう。きれいに見えます。
ただし、NSAIDSを良く飲む方なので前庭部に胃炎をしょっちゅう起こし
ガストリンレベルが低い可能性はあると考えました。
ところが主訴は、「のどの違和感」だったのです。
従って、酸の逆流がのどの違和感の原因ではない、と考えて患者さんには説明していきます。
(酸ではない胃内容物の逆流という可能性はある)
FGPの有無もこうして日常診療では重要な所見として役立ちます。

無意味な内視鏡所見など、ただひとつもない。

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