2017/06/23

患者さんが使うと割りとナイーブに反応する言葉がある。

「昔からそうなんですが」

複数回受診している患者の場合には「今まで話していなかったのはなぜだ?」と感じる。
それは取るに足らないと患者が判断していたのだろうか。
しかし丁寧に聞き取りをしていると、患者の記憶が間違っていて、徐々に症状が変化しているらしいが自身はそう感じておらず一貫してその症状だったと思い込んでいる例も散見される。何れにせよ、この言葉を初診以外で使う人には注意している。

初診でこの言葉を使う人には「表現が大雑把だなあ」という感想を持つ。



「全然効かなかった」

この言葉は自分の症状を正確に把握することが難しい人が発することが多いため、注意している。薬や治療の効果というのは一言では言い表せないものであるのだが、それを簡単に「全然」という修飾語を使って表現する人は、正解から逆に遠ざかっているケースすら多い。もちろん本当に効かないケースはあるもののこちらは具体的なフィードバックを期待している。うまく表現が出来ず困ってもじもじしている人には助け舟を出すので、問題ない。少なくとも一刀両断な表現で断じる事は避けたほうが良いと思う。



「ありとあらゆることを試した」

人間が考えつくアイディアというのは一部に過ぎない。したがってまだ試していない、あるいは考えていないところに答えがあるかもしれない。どういうことを試したか、を聞きたいのに「全部」と答えられてしまうと困る。記憶よりも記録が欲しい、といつも言っているのだけれど、それは消去法で考えていく時に必要だからだ。


論理的に思考して診断を考える時には、患者からの正確な情報収集が不可欠だがその妨げとなりやすい言葉がある。その場合丁寧に言葉を選んで患者の考えを解きほぐしてその真実を明らかにしようと努力するのであるが、比較的高度な作業だと言える。

0 件のコメント:

コメントを投稿