2017/04/03

情報には序列をつけよ

診るのを避けたい、あるいは時間の浪費だ、と思うのだけれど、
患者の中に病態についての質問ではなくて、
「A医師はこういいました、B医師はこういいました、どちらが本当ですか?」という質問をする人がいる。特に混んでいるときは本当にやめてほしい。私の診察と関係ないのだから。

答えは簡単で、主に以下の4通りがある。
1)A医師の言い分もB医師の言い分も論理的に矛盾がなく、その疑問を持つのは間違っている。
2)A、ないしはB医師が正しい。
3)A医師もB医師も間違っている。
4)まだ結論が出ている問題ではない。好ましい方を選べば良い。

AないしはB医師のところに私の名前を入れる人もいてそれは若干礼を失している。過去1ヶ月間どちらの言うことを聞いたのか、例えばA医師の説明通りにした場合には以後A医師にかかるべきである。B医師の説明通りにした場合には以後B医師にかかるのが道理である。B医師にはこう言われたけれどA医師の言うとおりにしてみた。でもなんとなく調子が悪い。つまりB医師の言い分のほうが正しかったらしいけれど、本当に本当にそうなの?と確認する意味で「A医師とB医師とどちらが正しいのでしょう」ともう一度B医師に質問することは愚弄である。

医師に信頼の序列をつけることが患者の選択だと言える。選択したのなら選択したほうにかかるべきである。ドクターショッピングとは次から次へと選択を変更する行為で時には愚かだし、ある程度以上は診療費は自費にすれば良いと思うけれど、一貫しているといえば一貫しているといえる。それを勧めているわけではないが。

そもそもこうして医者の前でのふるまいを間違える人々は、その後フィードバックを繰り返しながら修正するというような本来の医療の姿を見ることなく終わる。残念。

興味深い事も起きる。A医師のところに過去の私、B医師のところに現在の私の名前を入れる人々である。例えば10年前にこう言われた、という話を持ち出してくる。その場合には答えは以下の3つである。
1)A医師の言い分もB医師の言い分も正しく、矛盾はない。(条件が異なる)
2)B医師が正しい。(医療は進歩する)
3)あなたの記憶が間違っている可能性がある。(10年前でもその説明はしなかっただろうと考えられるいくつかの証拠がカルテに残っている)
いずれにせよ、B医師の言い分を選択するのが賢いと言える。

当院には医師が二人いるけれど、他院に比較するとおどろくほどκ比(診療の一致率)は高く、そうした問題が起きにくいが、仮に二人が違う説明をした場合にはどちらの考えを採用するか、の問題は出るだろうとは思われるので、やはり序列をつけるべきである。

医師に何か言われた後にナースや薬剤師に何かを言われたと言って情報を上書きする人々がおられる。そしてナースに確認してみると、そのような事は言っていないと言う。残念ながら記憶違いなのである。カルテに6ヶ月後来院すべき、と書いてあるのに来院しない人々の殆どは情報の序列の付け方に混乱が見られる人々であり、前述の人々と問題の根は同じであるように思う。

情報をすべて公平に扱って正しい答えが導き出せるのは我々のような訓練されたプロであり、みなさんには無理だ。みなさんは誰の情報を優先すべきか、をまず考えれば、医療上の不利益を被りにくい。

0 件のコメント:

コメントを投稿