2015/12/13

音の魔法について

紀州の紀、尾張の尾、井伊の井、で紀尾井町、というネーミングはとても好きだ。響きも良い。四ツ谷駅から聖イグナチオ教会、上智大学を抜けてニューオータニまで歩く道の雰囲気が面白い。純日本的な桜並木と、国際的な雰囲気とが混在している。あまり交通量の多くない道だけれど、いったいどういう人が通るのだろうと想像しながら歩くのも好きだ。日曜日になるとブラジル的になるところも含めて。



でも紀尾井ホールに入ったのは初めて。ウィーン学友協会ホールと席の配置が似ていることにまず驚いて、、、いや自分は音楽そのものに縁遠いから正月にテレビで見たその風景と似てるなと思って今ググって知ったところ。

指揮者村中大祐氏率いるスーパーオーケストラAfiA(アフィア)の演奏会、2015/12/11に行われた第8回のプログラムは、

Toru Takemitsu How slow the wind
Ravel Ma mere l'oye , suite
Mahler/Cortese Das Lied von der Erde (Japanese Premiere)

だった。
AfiA事務局から演奏会の前にきめ細やかな案内をいただける。村中氏による解説だ。彼らの演奏会の前に一読する事で理解が深まる。

武満徹氏の曲は冒頭から「これが楽器の音?」と驚愕。風である。楽譜にどう表現されているかはわからないのだけれど、村中氏のお勧めのように目をつぶって聞いていなかったとしたら挙動不審になってしまったに違いない。まだ3分ぐらいかな?と思っていたら11分が過ぎていたのにも驚いた。ゆっくりした曲なのに時間を短く感じるとはどういう事か。私は師匠の内視鏡を見学した後には体内時計が変化するのだけれどそれと似た体験。

小さな子供にいつもマザーグースの歌を歌っていたのをラヴェルのマ・メール・ロワを聞きながら思い出していた。ストーリーを予め教えてもらっていたからとても楽しく聴くことが出来たし、ラヴェルの天才が良く理解できた。

自分は少し離れた場所の席だったので、誰にも見られないのを良い事にマーラーの”大地の歌"では歌詞カードをガン見。会場が明るくて助かった。ドイツ語の発音を思い出しながら聴いた。良かったことは、歌手の表現というのは歌詞をなぞる事では決してない事が理解出来たこと。外国語の歌は、特にオペラのようにイタリア語やドイツ語は、声が良いなぐらいしかわからなかったのだけれど、歌詞と対比しながらだと、どれだけ工夫されてるのか、という事がわかった。

生で音楽を聴くという体験をあまり自分はしていない。していないだけにいちいちすべてが新鮮だけれど、例えば会場の聴衆の呼吸が、だんだんと変化していくことを感じる。音楽を聴く、という自分の行為に加えて、誰かの感激を追体験するとか、指揮者の姿を見ながら彼の内面で今何が起きているのかを想像するとか、あるいはバイオリン奏者の気持ちはどうかとか、あれこれ考えるなと言われそうだけれど、どうもそういう性格だからしょうがない、「生」というのは並行していくつもの体験をさせてもらえる、という点がヘッドフォンで名演を聞くのとは違う。

AfiAの演奏会が優しいと思うのは、演奏会前の丁寧なご案内の他に、演奏会の途中で村中氏がおしゃべりをしてくれること、拍手の時にすばらしい演奏をしてくれた演奏者の方をご紹介してくれること、終了後にロビーでご挨拶が出来る事など枚挙にいとまがないが、これらの心遣いが体験の感動を増幅させることは間違いのないことだ。

村中大祐氏プロフィール

次回は2016年2月18日(木)紀尾井ホール19時開演
村中大祐指揮Orchestra AfiA「自然と音楽」演奏会Vol.9

Frühlings Traum 「想春歌」

指揮:村中大祐
ヴァイオリン:アレーナ・バエーヴァ
管弦楽:Orchestra AfiA
コンサートマスター:依田真宣(東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター)
メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
S・バーバー:ヴァイオリン協奏曲
シューベルト:交響曲第9番ハ長調「グレート」

です。今回のコンサートと打ち上げの様子は平成28年1月23日午後10時30分BSフジ「Table of Dreams~夢の食卓~」で放送予定。AfiAの方々のインタビューなど収録の様子を見ることが出来てそれも楽しんだ。

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