2014/08/24

自然気胸はなぜ痩せて背が高い男性に多いのか

「自然気胸はなぜ痩せて背が高い男性に多いの」と聞かれました。
考えたことがなかったんですが、「わからない」とは言いたくないですよね。

非常に単純に考えますと、

1)物理的に肺の表面積が大きいほうが気胸になりやすいだろう。
2)内圧が陰圧になりやすい方が気胸にはなりやすいだろう。

という事になりましょうか。
やはり背が高いことは肺の表面積と関連するでしょう。
あと陰圧というのが重要かなと。穴あいたときに漏れやすいので。
女性や太っている人では横隔膜がやや上のほうにシフトするので少し陽圧気味になるんじゃないかと。背が高い上に痩せていると横隔膜を上方に下から押す力は全く働きませんから、相対的に陰圧になりますね。

肺尖部のブラに穴があいて自然気胸になるケースは当然多かろうと思われるので次にブラの生成について考えます。ブラ自体は普通の肺胞よりも脆弱だろうことは想像がつきます。

「ブラがどうして肺尖部に出来やすいのだろう」という問題もなかなかの思考実験です。

1)重力、は関連するのではないか。
2)動きが一番ない場所、という事は関連するのではないか。

重力という点では、もっとも単位容積あたりの血流が少ないという事が言えましょう。それが炎症やその治癒を悪くする。そして最も肺の中では動きのない場所である、という事も関連するのでしょう。それが何か炎症が起きた時にドレナージが悪いなどの原因になるかもしれませんし、タバコの煙や汚いガスもその部分に長く貯留するのかもしれません。

2014/08/15

根拠のある推定と根拠のない推定を見分けよう

医学は数学などのような論理的な世界とは若干ことなるかもしれませんが、しかし化学、物理学、数学、いろいろな学問の上に成り立っていることは確かです。
ならば真実を理解するのは容易い、と思いきや複雑すぎることがその理解を邪魔します。
結果として世の中には様々な「医学的に見える嘘」が存在しており、しばしば皆さんを、あるいは医師をも惑わせます。製薬会社の過剰なマーケティングの弊害をみなさんもご存知でしょう。しかしそうしたやりすぎを利用して(陰謀論、などと呼ばれますが)自らの利益にしようとする人々がいることもまた事実です。そして皆さんに被害を与えるのです。残念ながらマスコミや政治家、あるいは医師までもが好ましくない嘘をついてしまう現状で、みなさんはどのように本当の情報を得れば良いのでしょうか。

何かをみなさんに主張したいとき、判断の材料を辿るように出来ることがもっとも誠実な方法です。
そういう点で、テレビというメディアは信頼度がゼロに近いと言えます。それでいて希求力が高いのです。インターネットはどうでしょう。意図的に情報を隠ぺいすることは可能なので、やはり信頼度は低いと言えましょう。

したがって、能動的にみなさんが「真実を知りたい」と検索をする能力がなければならない。あるいは取材を繰り返さねばならないのが現実です。しかもそれらの情報を手に入れるのは有料だったりする。まるで「お前たちは真実を知るな」と言われているようで腹が立ちませんか?悔しいですが、まだそういう時代なのでしょう。できればみなさんは英語が出来たほうが良いし、pubMedやら、up-to-dateにアクセス出来る能力を身につけてはじめて真実とは何かを見分けることが出来るのです。なんとハードルが高いことでしょう。

「そういう時代」と言いました。そう、まだ真実をどう保証するかという方法がないから現状では限られた場所にリソースが集中するのです。では将来はどうでしょう。bitcoinという仮想通貨があります。これには金銭の授受のすべての記録が保管されるという特徴がありしかもその真正性が保証されます。

もっとも誠実な方法である「学術論文」においても、知識のロンダリングとでも呼びたくなるテクニックが使われることがあります。論文を孫引きまでして読む人が少ないことを利用して、論理を少し捻じ曲げるのです。しかしbitcoin的に判断材料の履歴がすべて保管され遡れるとしたら面白くありませんか?

私はbitcoinのアルゴリズムによって、完全にデジタル化された芸術作品がこれで可能になった、と喜びましたけれど、色々な知識には「履歴」という属性が大切であり、それを保証する手段にも使えるのではないかな、とぼんやりと考えたのです。

2014/08/05

より積極的に介入することにしました

介入というほど大げさではないのですが、ラガードという言葉を使いたいだけでこのエントリーは書いています。

アメリカの社会学者エヴェレット・ロジャースが提唱したイノベーター理論を応用して、健康診断の受容時期を早い順から層状に分類していくと以下のようになります。
まずイノベーターは関係ないので除きます。

アーリーアダプター(最初に飛びつく人)
アーリーマジョリティー(アーリーアダプターに早期に追随する人)
レイトマジョリティー(効果がわかってから追随する人)
ラガード(ぐずぐずしている人)
そこにネグレクト(拒否する人)を加え、5層になります。

医療機関に受診する事がない人々には介入できないので、ここで問題になるのはラガード層です。この方々は単純に「やり方がわからない」というだけで検診を受けていないのです。

主に対象となる人々:
40−64歳の方で、
社会保険家族の保険証をお持ちの人々はほとんどがラガードです。
国民健康保険の保険証をお持ちの方の半数以上がラガードです。
65歳以上の方々にはほとんど主治医がおられるので介入しません。

具体的な方法:
問い合わせ先の電話番号、あるいは申し込みハガキの書き方を外来でお教えします。
具体的には患者さんの目の前で各保険を検索してサイトを表示しプリントしています。
具体的な日程が決まっている場合にはそれを教えます。

チェック項目:
B型肝炎C型肝炎検査を受けたことがありそうか
40歳以後の便潜血検査を受けているか
50歳以後2年に1度のマンモグラフィを受けているか
子宮頸がん検診を受けたことがあるか
肺がん検診を受けたことがあるか
胃がん検診を受けたことがあるか

検診においては、やり過ぎが非常に問題になるのは当然なのですが、受けていない人のほうが圧倒的に多い事実を忘れてはなりません。欧米では便潜血検査の受診率は60%を超えると言われ、日本では20%以下とされる上に陽性となったときの精検受診率も甚だ低いのです。大腸内視鏡を繰り返して受ける人がいる一方で便潜血検査を受けていない人々が多いのは不公平すぎます。

例えばこの10年ほど、待合室に必要な検診の受け方について掲示していますがその通りに受ける方は1割といったところでした。
しかし直接患者さんに日程を説明すると、すぐさま申し込んでお受けになることが非常に多いことに気づきました。6割とは行きませんが、半数ぐらいは行ってくれるかのような手応えを感じています。伊勢原市の場合は一度受けてくださると、例えば便潜血検査は翌年もお知らせを送ってくださるようで助かります。

以下、近隣自治体での具体的な申し込み方法について書いておきますので参考にしてください。(平成26年8月5日現在)
伊勢原市
便潜血検査についてはに電話をしますと容器を送ってくださって、あとは伊勢原シティプラザなどで検診が行われている日に持っていくだけで完了です。乳がん子宮がん検診は上記電話番号に電話して予約してくださいと説明しています。かなり簡単。
秦野市
もう来年の申込みが始まっています
厚木市
受診対象者全員にお知らせが郵送されているそうです。4月から保険証が変更になった場合にはこの限りではありませんのでこのページの下部にある連絡先に問い合わせてください。
平塚市
はがきで申し込みましょう。(→リンク)日程はこちらページの予約状況を御覧ください。
大磯町
はがき申込も個別検診も行っています。(→リンク先のPDFを見ましょう
二宮町
特定健康診査といっしょに受けられたりもします。(→リンク先のPDFを見ましょう