2013/03/02

40歳からの便潜血検査

便潜血という検査があります。大便の中にわずかな血液が混じっているかどうかを調べるのです。
人間の大腸の粘膜は脆弱(弱い)で、多かれ少なかれ出血はあるものです。
したがって、正常の大腸であっても「陽性」と判断される場合はあります。

老人保健事業によって1992年から40歳以上の男女を対象に便潜血検査が日本では行われており、これは海外より少し早い年齢です。(海外では50~55歳以上が対象になっていることが多い)

さて、陽性と判断される人数なのですが、大雑把に上位2~10%以内に入っている事ではないかと思います。カットオフ値は各施設で違い、40ng/mlとしてみたり50ng/mlとしてみたりいろいろだと思うのですが、例えばNEJMのこの論文は、陽性者が9.8%ぐらいとしています。

そもそも大腸癌は毎年10万人あたり96.1人(こちらにデータあり)が罹患し発見される癌です。
だいたい0.1%です。二次検診に受診した人のうち、1~2%に癌が見つかればそれはなかなか優秀です。そうしたければ、二次検診へは0.1%の50倍から100倍の人数をまわせば良いという事になる。カットオフ値を上位5%とするいうのはそんなに根拠のない数字でもありません。

ここで、いつも裂痔で出血していたり、大腸炎で出血したりする人は無視して、
少なめに見積もって毎年3%の普通の人がランダムに検査に引っかかってしまうというモデルを考えてみます。そこで、40歳から64歳までの25年間、一度も便潜血検査で陽性にならない、という可能性を計算してみます。

計算式は、
(0.97^25)です。すると答えは0.47となります。大雑把な計算ですが、ほぼ半数の方は65歳までに必ず1回は全大腸内視鏡検査を受ける羽目になる、という事です。

全大腸検査を一生のうち1回でも受けると、左方結腸癌の7割は、癌になる前にポリープの状態で切除されてしまい予防される、というカナダの統計があります。(あらゆる検査の中で、検査を受けることで癌の直接の予防になるのは大腸内視鏡だけです)

65歳までに、理由がなくても、大腸内視鏡検査を受けることは公衆衛生に貢献すると考える人達がいますけれども恐らく便潜血検査でも同じような事をしているのです。

ちなみに便潜血検査を500円として、それを25年行いますと12500円。それで半分の方が陽性になって20000円強の大腸検査をお受けになる。大雑把に考えると、一人当たりのコストは((12500 x 2) + 20000) / 2 = 22500円/25年という事になります。

それならば、最初から65歳までに20000円強の大腸内視鏡検査を全員に行えば、コストは同じ、さらに、対象者が50%から100%に広がるので公衆衛生に貢献するかも知れません。



私は、便潜血検査を40歳からまじめに毎年受ける事はとても良いことだと考えています。ただし途中でさぼったり、陽性になっても検査にいかないような人々にはその役割は果たせないため、彼らは大腸内視鏡検査を受けるべきだと思います。ただし、その時の費用負担をどうするかなどクリアせねばならない問題はあると思います。

ちなみに親あるいは兄弟に大腸癌の方がおられる方は大腸内視鏡検査の対象者です。

2 件のコメント:

  1. 「毎年10万人あたり96.1人」なら約1%ではなく約0.1%ではないかと。

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    1. あ、そうですね!ありがとうございます!

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