2013/01/21

患者さんのメモについて

患者さんがメモを取ろうとしている時、
でも皆さんは新聞記者や速記者とは違って慣れていませんから、
医師の説明を理解するどころか、
注意散漫になってしまい正しく理解出来ない場合が多い事実を、
あまり良いこととは思っておりません。

医者が話すことは、
1)それまでの診断や見立て(と、その判断の理由)

2)これからの方針と見込み
なのですが。

それらの判断が、
「あ、理に適ってるな」と
患者さんが理解してくれた時に、
実はその後想定外の事(医者が想定していても1%以下の出現率なので患者さんには話していなかったこと)が起きても、
患者さんの思考はちゃんと我々に付いて来てくれる、
という事を私は知っております。
というのは医師の思考過程について患者さんが信頼をしてくれていると、
戸惑いや驚きは最小だからです。
(予想外だけれど、きっとこの医者はそれでも対応してくれるだろう)

お話を集中して聞いて下さい。
メモを取るのは一見良いことに思えますが、
まずは医師の言っていることを可能な限り理解しようと努めることが重要だと考えます。

メモをしようとなさるのは感心な事です。
キーワードはちゃんと書いてお渡ししますので
安心して下さい。

2013/01/08

診察時にAndroidデバイスをスケッチブックとして使う

案外こういう使い方をしている人が少ないようなのでメモ

1)なんでもいいのだが、例えばSkitchをインストール

2)AndroidのBluetoothをON

3)PC(Windows 7)のBluetoothをON

4)リンクする

5)Bluetoothのオプションでセキュリティタブを見る。レベルのカスタマイズで、「オブジェクト交換(OPP)で受信時、確認メッセージを表示する」のチェックをはずす

6)Skitchでメモするなり写真を撮るなりして、Bluetoothで飛ばす

7)自動でマイドキュメント\Bluetooth\Inboxに入る


8)Inboxを常駐ソフトでスキャン(あるいはTimerで電子カルテから定期的にチェック)しておいて、Inboxにpngファイルが確認されたら直ちに電子カルテ中の患者情報と紐付けして表示



いろいろ考えてみて、これが一番スマートだと感じた。
1)インターネットにつながなくても良いのでうれしい
2)ちょっとこのメッセージボックスが悲しいのではあるけれど。(時間が経つと消えます)
3)iPhoneでは無理みたい。

もちろん、Windows8タブレットに"Note Anytime"をインストールして使うという手もあるでしょう。



2013/01/06

お腹が鳴る

「お腹が鳴る」という事で困っておられる方が多く、いつも同じ説明をしなければならないためここに書いておきます。

ダイナミックMRIで証明したわけではありませんがたぶんこんな感じだと思いますよ。
楽器としては(水が入ってしまった)オーボエに近いと思います。リードの役目をするのが肝わん曲部。

以下、解説します。

お腹の絵を描いてみました。くびれたウエスト、富士山みたいな真ん中のが肋骨弓、足の付け根のラインは黒で描きました、わかりますね?青く描いたのは大腸です。Cは盲腸、Aは上行結腸、H肝わん曲部Tは横行結腸、Spは脾わん曲部、Dは下行結腸、SはS状結腸、Rは直腸です。

  • 消化された食べ物は消化・吸収された後、盲腸(C)に送られます。そこに大量の腸内細菌がおりまして、発酵が始まります。ゴボゴボゴボゴボ・・・、小腸で栄養を吸収された後のカス(残渣)に少量含まれた糖分やアミノ酸を細菌が分解してエネルギーにするのですが、このときに二酸化炭素、メタン、水素などが産生されます。
  • したがって上行結腸(A)はいつもガスで一杯です。(→結腸憩室症




  • 二酸化炭素だけなら良いのです。二酸化炭素はすぐに吸収されるからです。(→二酸化炭素で内視鏡
  • でも、ある程度年齢を重ねると、腸の中にはメタン産生菌が増えてきます。それは善玉か、悪玉か、といわれると悪玉菌とされています。年をとると(というか、20歳代ですでに)、悪玉菌が増加するのです。90歳代になるともはや悪玉菌が99%を占めると協和発酵さんから聞きました。すごいですね。(→電撃ネットワーク「おなら燃やし」
  • さて、メタンや水素が産生されると、大腸が膨らむ。これは刺激になって蠕動を誘発します。(しかし過度に膨らみすぎると、今度は蠕動を抑制します。ゴボウは諸刃の剣です)
  • ここで、Hで示した肝わん曲部は折りたたまれているのですが、蠕動が起きたり、あるいはガスの量が多くなり、ここをガスが通ろうとするときにはプープーとかゴロゴロとかポコポコとか、音がし易いのです。聴診をするときに、「どこで音がするのかな?」と注意深く聞いていますと、わん曲が強いHSpSから確かに音が聞こえてくるのです。でも、特に「お腹が鳴る」という患者さんではHの音を注意深く聞きます。コロコロとかポコポコという音が聞こえてくることが多いのです。楽器でのリードの役割をするのがHです。
  • 聴診器で聞くような小さな音でも、ラッパのような筒状の構造をしている結腸では、増幅されてしまう場合があります。(→ホーンの動作原理)私は絵を描くときに、横行結腸(T)をラッパのように描くのですが、それを患者さんに理解してほしいのです。どうしてあんなに大きな音になってしまうのかを感覚的に理解してほしいからです。
  • 構造には個人差があってS状結腸で音が鳴る人もいるでしょう。しかし「音の源があり、それが増幅される」という基本的な原理は同じであることを理解してください。


ところで、患者さんはもちろん二つの理由で来院されるのです。
1)これは病気なのですか?
2)治るんですか?

その答えは人それぞれなのですけれど、特に2)について基本的なアプローチのヒントだけを書いておきます。

1)ガスの量と質・蠕動・音が出る場所・反響音の4つの軸で考えよ。
2)ガスについて、「量を減らすアプローチ」と、「二酸化炭素とメタン・水素の比率を変えるアプローチ」があることを知れ。
3)蠕動について、「蠕動のきっかけとして何があるのか」を知れ。
4)音が出る場所がどこにあるかを理解せよ。そして音が出ないようにする工夫が出来ないかどうかを考えよ。
5)反響音が大きくなってしまう因子を考えよ。

と、これだけ書くと不親切に感じる人がおられるかもしれない。
(でも、本当は、メタ知識を書くよりもこうした基本原理を書くほうがよほど親切です)
ですので、指導の一例を書いておくことにします。

<指導の一例>
1)ガスが多くなる因子として重要なのが腸内細菌の変化である。いろいろな種類の整腸剤やヨーグルト、お漬物など発酵食品があるけれども、2、3回飲んでみて、「お?違う?」と思ったらそれは合っているかもしれない。逆に一週間も続けて変化がなければ無駄。ビオスリーは試してみる価値はある。他の整腸剤で「これは!」と思ったのはほとんどない。
2)不溶性の繊維質が体に良いと思ったら大間違い。過度に摂りすぎてる人多し。水溶性の繊維はOK。わからなかったらググること。ググれない人は、たぶん指導しても無理。ググったらそれが正しい知識かどうかを僕に聞いてください。かなり嘘が多いので、そこで訂正します。
3)歯はきちんと治しておくこと。咀嚼が消化の原点だから。あと、食事のときに水分をきちんととりましょう。
4)ジョギングは良いかもしれない。憩室が消えた、という報告があるぐらいだから、Aからガスが抜けやすくなったり、あるいは腸の蠕動が均一になったりするのかもしれない。ジョギング以外では報告は見たことがない。歩いたり自転車で良くなるとは思わない。
5)「会議のときにだけ音が困る」という事ならば、蠕動を止めるお薬(トランコロンなど)を1時間前に使うという方法もある。市販薬でもそういうお薬はある。
6)ガスコンの効果は消泡剤としての音の減弱効果だけではない。メタン産生菌を抑えてくれる作用があるかもしれない。(反芻動物の胃内メタン産生を抑えるのにルーメン(第一胃)の粘度を植物油で抑えることが有効らしい)ただし、強烈に悪化させる場合があるから、万能薬ではない。

基本的に、プッシュ型の指導は宗教みたいで得意ではなく、ケースによって上記のような指導をしています。
だって、話し出すときりがないのです。例えば、子供の夜泣き。アメリカではシメチコンというお薬をなめさせることがあるんですが、これはガスコン(上に出てくる消泡剤)と同じものです。というか、内視鏡のときに使う大切な薬、ガスコンシロップ(あと関係ないけれどプロナーゼMSも)がアメリカでは医療用として売っていないのですよ!そこで市販の子供用のシメチコンを買ってきて、内視鏡のときに使っていたぐらいです。こういう内視鏡検査のきめ細かな工夫の日米の違いに気づいたのは私がアメリカで指導していただいていた叔父のDr.Sugawaが日本人だったからこそでして、珍しいことでした。欧米では内視鏡のときにガスコンを使うと良いらしいぞ、といわれだしたのが日本に遅れること40年?もっと?つい5年10年ぐらい前の事なんです。夜泣きに話を戻しますと、赤ちゃんのお腹をポンポン打診してみるともれなくガスで一杯です。ところがほとんどの赤ちゃんは痛がりませんよね。それは赤ちゃんの腸内細菌は90%が乳酸菌で、そのガスは二酸化炭素だからなんです。すぐに吸収されてしまい痛くない。では夜泣きをする赤ちゃんの場合はどうなんでしょう。夜泣きの原因のすべてが腹圧の上昇とは限らない(生馬医院の夜泣きのページはここをクリック)と思いますが、確かに浣腸したり、おしっこさせたりすると治ることが多い。そして経験上シメチコンが効くとアメリカでもなっているということは、赤ちゃんのお腹にメタン産生菌が増えたり、げっぷが上手に出来なかったりしたときに、お腹が痛くて泣いている、という可能性はあるわけですね。じゃあ、例えばそういう赤ちゃんには抗生物質の投与歴がないか調べたりとか、乳酸菌をなめさせたらどうなるの?とか興味はつきません。これ、話の内容は違うのですがガスと腸内細菌という同じ事を議論していることになりませんか?人間の身体の事を考えるときに、こうした「概念のオーバーラップ」は良くおきます。(片頭痛は腹痛と概念のオーバーラップが起きたり)それをまとめて議論するのはとても難しいことですが、正しい連想が起きるように沢山勉強するのが大切だと自分は思っています。

お腹が鳴って困る、という場合にある程度何が起きているのか自分でも考えてみましょう。基本原則は書きました。「胃がなる」は別の話です。
そしてそれを医師と議論してみると良いでしょう。すると先生が私とはまた違う連想をして下さってアイディアを下さるかもしれません。まだ上には書いていないことが沢山ありますから。











遮音シートで洋服作れば解決するのかもしれない。