2010/10/06

社会人になって、のどから風邪を引きたくない人が実行すべき事

のどからの風邪の定義モドキ

風邪のウイルス、例えばライノウイルスなどは空気中に飛沫として漂って(ぷかぷか浮かんで)いたり、あるいはあなたが触る色々な場所に付着していたりするのでしょう。それは主に人から人への感染だと思う。それがのどの粘膜に付着したときに、のどの粘膜とウイルスの表面とが親和性(くっつきやすい)があると、そこからウイルスが侵入して増殖をはじめます。これがのどの風邪です。

風邪にかかりにくい人がいる。私が思うに、のどの粘膜の表面の性状が風邪のウイルスと(ミクロの世界ですよ)くっつきにくい人がいるのがひとつめ、のどの粘膜はIgAという抗体が守ってくれるのですが、たまたま幼い頃に引いた風邪の種類が良くてスーパー抗体(広く色々な種類の風邪に効く抗体)を持っていて、のどへの付着を防いでくれるのがふたつめ、というような理由によると思います。

<風邪にかかりやすいとはどういうことか>

ひとつの理由はウイルスに暴露されやすい環境にいる事です。例えば銀行員都市伝説かも知れません)。ただ社会生活を営む以上、ウイルスに暴露されないことは困難です。大学で風邪が流行ったりするのは、ちょうど年齢が若いことと、感染防御に対する意識が欠けるという事が重なるからでしょう。従って啓発は重要であり、たとえばインフルエンザの防御に関しては京都大学の保健室のホームページは良くできています。ちなみに慶応大学の保健室のホームページはこちらです。両方とも良くできていますが、みなさんのニーズを満たしているのかどうか。ポータル(表玄関)としての出来は今ひとつかもしれません。こういう隙を見つけたら、むしろみなさんが役立つ番(例えば新しいホームページを提案する)ですから頑張って下さい。

ふたつめの理由はウイルスがのどにアプローチしやすい理由があることです。
手洗いはちゃんとしてありますか?ジュースの回しのみをしていませんか?おはしを共有したりしていませんか?普段鼻呼吸をしていますか?おしゃべりに一生懸命になりすぎると鼻呼吸を忘れてしまいますよ。鼻はちゃんと通っていますか?(副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎などがないですか?)寝ているときに口を開けていませんか?通常、ライノウイルスは33度以上ではあまり増殖しないのだそうです。従って口です~す~息をしている方が粘膜の温度が下がるのではないかと思いますし、実際口呼吸をしている人の方がのどを痛めやすいと思います。もともとのどを保護している粘液が乾いて荒れやすい、そこに病原菌が付着したりウイルスが感染しやすいという理由があるのだと思います。

みっつめの理由は(すでに上にお示ししたような)免疫反応には個人差があって、例えばもっているIgAが多少不利であったり、唾液が少なかったり、あるいはあまりご飯を噛まない人でそのために唾液が相対的に少なかったりという理由があるのかもしれません。

<風邪の予防は出来るのか>

口からウイルスが入らなければ良いのですから、あちこちに触った手でものを食べたりしない、鼻をほじったりしない、ましてや爪を噛んだりしないなどの注意は最低限必要です。手はいつも洗っておきましょう。飛沫に関しては避けようがないと思いますけれど、空調の方向に注意しなるべく教室内では風下に座らないなど気をつけると良いかも知れません。ウイルスに暴露されてから15分以内ならば「塩水によるうがい」で感染予防ができるらしいですから、まめなうがいは効果があるでしょう。

<なぜお休みの日に熱が出るのか?潜伏期間を逆算するといつも水曜日あたりに感染しているのか?>

風邪を引いても交感神経系が興奮していると症状が出ない、気づかない、ということは日常茶飯事なのかもしれません。風邪の引きかけに麻黄湯、葛根湯という処方はエフェドリンを使用して交感神経系を興奮させておくという処方なのでしょう。これがお休みで副交感神経系が優位になりますと症状が出やすいのかもしれません。

<他にないの?>

なんだ、これだけか、と思うでしょう。
人により少し対処方法を変えますが、大体このくらい地道です。一次予防なんてものは。

では個別にどんなアドバイスをすることがあるのでしょうか。過去を振り返って、そして自分の経験からいくつか書いておくことにします。効いたよ、効かないよ、教えて下さい。

■マウスピースは効果がある場合がある。
口を開けて寝てしまうタイプの人には効果のある方法がこれです。実際自分も入れて寝ていた時期があります。口が渇かなくて良かったですよ。
■鼻づまりを治す。
鼻づまりがある人なら、耳鼻科に行けばムコダイン・オノンぐらいは処方して下さるかもしれません。判断は専門の先生にお任せしますが。(注:抗ヒスタミン剤出されまくって、逆効果だった人も)
■イソジンうがいぐすりは避けた方が無難。
塩水の方が確実です。もともとのどが乾いて荒れている場合はそれを悪化させるので止めた方がよろしいです。http://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(05)00258-8/abstract
■ガムデンタルリンスノンアルコールタイプは効く。
イソジン同様、アルコール入りのマウスウォッシュは全部使ってはいけません。自分が使ってみて一番良かったのがこれです。ナイトなど余計な付加価値をつけた商品もありますが、オリジナルがベスト。
■エキナセアは効いた。
エキナセア入りのお茶などが売っていて、そんなに高価ではないけれど、効いた気がしました。どうしてかは知らない。
■カテキンとかプロポリスは自分はだめだった。
吸着作用のせいか、のどがかさかさしちゃってだめでした。プロポリスはのどがさらに荒れた気になって自分はだめでした。殺菌作用はあるはずなんですが。
■マヌカハニーは効いた。ハチミツも効く。
自分は効きましたね。高いけれど、マヌカハニー。でも偽物もあるかもしれないなあ。
■亜鉛は効いた気がする。
アメリカに良くあるんですが、風邪に亜鉛のサプリメント飲むんですよね。まあ過剰な免疫反応を抑制するだけかも知れないけれど。
■ビタミン類は効いたかどうか、わからない。
もともとビタミン慣れしてるせいか、自分には効果不明。ドリンク剤は中のカフェイン頼みですが、極量近く入っているエナジードリンクと、葛根湯などを組み合わせるのは大変危険だと思いますね。吐き気があったら過量投与です。
■ミントなどハーブ類は効く。
咳も止まりますしね。エッセンシャルオイル吸いすぎるとのど乾きますけれど。
■ヴェポライザーはもってます。
ヴェポライザーって吸入器の事。電機屋さんで売ってますよ。結構やってます。
■ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏は好きです。
漢方薬なんですけれどね、麻黄湯とか葛根湯も使いますけれど、のどが痛いときには結構これです。
漢方薬局でも買えますが、「高価な」薬ですよ。
■鼻うがいも好きです。
鼻咽腔炎というのがあって、のどのちょっと上、鼻の裏側あたりが痛いときにはこれが効きますね。
塩水でうがいして下さいね。

とまあ、全部じゃないんですがリストにしてみました。
神経症的に多いですね!自分でもあきれました。
しかし、アメリカに留学している間、風邪で医者なんか行けないわけで、自分で研究してやってみた結果がこれです。市販の薬を入れてませんが、抗ヒスタミン薬が大嫌いなので私はお勧めしません。鎮痛・解熱薬は市販のもので良いと思います。抗ヒスタミン薬が入ってない風邪薬として有名なものは改源でしょうか。

ご参考になれば幸いです。

9 件のコメント:

  1. ささぶね2011/11/22 10:50

    はじめまして。

    冷え込んできたので風邪薬を準備しておこうかと思っているところで、興味深く記事を読ませて頂きました。

    差し支えなければ、抗ヒスタミン薬が大嫌いでお勧めできないという理由を教えていただけないでしょうか?

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  2. ささぶねさま

    アメリカのFDAの発表を待つまでもなく(http://bit.ly/uTCbPP)粘膜からの分泌液を抑制する事は、白血球の活躍を抑制する事になりますので、大人でも治癒を妨げる可能性があります。
    小児の場合には抗ヒスタミン薬が小児の脳症を誘発する可能性も小児科医では問題視され、そのような作用のない抗ヒスタミン薬を、限定した条件下で使用するのが良いとされていると思います。
    次に私が専門とする消化器にもヒスタミン受容体があります。それぞれの抗ヒスタミン薬で胃腸に与える影響は差があるものの、安易な使用でおかしくなってしまった胃腸のケアをしなければならない仕事が結構あるのです。

    以上から、抗ヒスタミン薬の使用は手軽かもしれないけれども、実は奥が深い薬で、場合によっては害をもたらしてしまう。アレルギーのコントロールに使うならまだしも、感冒に関してはメリットはないのではないか、という立場です。むろん私でも抗ヒスタミン薬を風邪に処方することはあります。

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  3. ささぶね2011/11/24 9:56

    早速丁寧にご回答くださりありがとうございました。

    URLの記事によると、子供に対して効果がはっきりしないとまで言われているのですね。大人の場合も、白血球や胃腸への影響を考えると注意深く使った方がいいということですね。

    市販の風邪薬は抗ヒスタミン薬が大半のようで、それを特に気にも留めていなかったのですが、お医者様に「お勧めしない」と言われるとさすがに気になってしまいました(笑)改源を準備しておこうと思います。

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  4. ささぶねさま
    多くの風邪ウイルスに対して我々は抗体をすでに持っており、調子を崩しても1日2日持ちこたえればすぐに抗体が動員されて治ってしまうという事が大半です。その1日2日の「症状を軽く見せる」のが「風邪薬」というものです。つまり市販の風邪薬は1回か2回飲んで楽になる、というのが本来あるべき使い方だろうと考えます。ではなぜ5日分パックになっているのかというと、それは商売だろうと思います。
    改源は葛根湯にアセトアミノフェンを配合したものですが、あまり長持ちするパッケージングがされていなかったと記憶しています。
    したがって、本当のおすすめはエキス剤になっている漢方薬(カネボウ、コタロー、ツムラなどから発売されていて、処方箋なしに買える)と、アセトアミノフェンを別々に用意しておくこと、ということになります。

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  5. ささぶね2011/11/27 19:22

    すいません。新たに頂いたコメントに昨日返信したつもりだったのですが、投稿されていないですよね?こちらの画面のリロードができてない??などちょっとわけがわからなくなってしまったので教えていただけますでしょうか。

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  6. ささぶねさま
    こんにちは
    確認しましたが投稿されていないようです。
    恐れ入りますが、もう一度ご投稿いただけますか?

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  7. ささぶね2011/12/02 9:31

    ああ、エア投稿していたようですね...orz お手数をおかけしました。

    投稿の下書きを残していましたので、以下コピペにて失礼致します。

    ↓-------

    お忙しいところもう一度コメントいただき恐縮です。ありがとうございます。

    なるほど「症状を軽く見せる」という風邪薬の役割が理解できました。以前風邪で病院にかかった時、薬を7日分処方され(こんなに長引かないのになあ...)と内心思ったのですが、もしもの長引いた時のためだったのか商売のためだったのかは今もって定かではありません(笑)

    アセトアミノフェンは聞き覚えがなかったので調べてみると市販薬でいろいろ出ているのですね。タイレノールなどなど。葛根湯も調べたら安く売っているのですね。(漢方はなんとなく高いイメージがありました)

    今回は私のちょっとした質問に大変親切な回答をくださり感謝しております。先生は...真摯な紳士ですね(笑)

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  8. ささぶねさま

    風邪は平均して5日程度で症状はなくなるという論文があったと思います。7日分というのは「勢い?」みたいなものでしょうか。明らかに細菌感染症だと思えば7日分、様子見ながらそれ以上処方することがあります。

    アセトアミノフェンは不思議なお薬(NSAIDS)です。比較的使いやすい。タイレノールはアメリカではビッグネームで風邪薬の代名詞ですね。あちらでは色々な種類があるので気をつけて。日本ではタイレノールA、タイレノールFDともにアセトアミノフェンのみでカフェインが入っていないので選びやすいですね。

    はっきりとは書いていませんが、
    1)不適切な治療(市販の抗ヒスタミン薬を漫然と使用するなど)によって風邪なのに悪化させてしまうことは是非避けて欲しい。
    2)実際には風邪なのか、治療すべき感染症・合併症があるかどうかを鑑別する事こそ重要な医師の仕事です。それを明確に説明してくれるような医師がご近所にいればそれほど心強いことはないと、私は思います。抗生物質の使い方が適切な先生は見ていて感心します。

    最後はきれいにダジャレで落としていただきありがとうございます。

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  9. ささぶね2011/12/04 16:03

    具体的で丁寧なアドバイスを本当に、本当にありがとうございます!おかげ様でこの冬は心強い気持ちで風邪を迎え撃てそうです。

    ここのところ寒暖の差が激しくなっておりますので、どうぞ先生も体調を崩されぬようご自愛下さいませ^^

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