胃カメラの検査で、事前に緑内障の有無、あるいは前立腺肥大による排尿困難の有無を伺います。
現在では、過去の同様な検査に比較して「抗コリン薬」というお薬をほんの少量しか使わないために、おそらくほとんど眼圧や排尿には影響しないのではないかとも思いますが、過去に様々な事例が報告されたでしょうからそれに従って、緑内障があったり排尿困難があるときに、抗コリン薬の使用について配慮しております。
ただ、患者さんの中には排尿が悪いことを検査をするまで自覚しておられない方もおられるでしょう。問診を行い配慮していたとしても、抗コリン薬を普通通り使用し、それによって尿が出にくくなってしまう事は理論上はあり得るわけです。そのときに、一時的に細い管を使用して排尿していただいたと仮定しますと、しかしその細い管を通した尿道はあとで浮腫んでしまうでしょうしすっきりとはしないでしょうから、どのようにケアするのがベストなのだろうかと考え込んでしまうわけです。
ところが幸い何万人か拝見していて、検査後に細い管を使用せねばならなかったという事例が一件もありません。それは何故なのかを考えることにします。
1)静脈注射で抗コリン薬を使うから
当院は上部内視鏡ではアトロピンを0.1mg~0.3mg(0.2A~0.6A)使用します。脈拍に大きな変化も出ず、しかし唾液は止めてくれ、また鎮静したときの血圧の維持はしてくれるちょうど良い量であろうと考えます。しかも静脈注射なので代謝も速い。
下部内視鏡では必要に応じてブスコパンを3mg~20mg(1/8A~1A:ほとんど1/4Aで済みます)使用します。脈拍を70~90程度に維持する事を目標にしています。尿閉がある、閉塞隅角緑内障だという場合にはグルカゴン0.2mg~0.4mg(0.2A~0.4A)を使用します。いずれも代謝が速いようです。
2)少量だから
上に示したように、少ししか使いません。
それでも検査後に「尿が出ない、おなかが痛い」と訴える患者さんはたまにおられるのです。
そのときにはエコーをするとわかりますが、ある程度尿はたまっているものの、高度ではない場合が多く、そして重要なのは非常にガスや便がたまっていることがわかります。
慌てず浣腸をいたしますと速やかに排便され、そして排便後にきちんと排尿もされます。腹痛が取れてお顔もにこやかです。
検査後に尿が出ないと聞いた場合にあわてて細い管を入れて云々と処置をしてしまう前に、ガスが出ているか、便がたまっていないかを確認することがとても重要ではないかと思っております。
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