2014/10/01

PPI + モサプリドクエン酸塩を最初から同時投与してはならない

モサプリドクエン酸塩の追加投与がPPI抵抗性NERD患者に有効



という、報告を見て、初診の「胸焼け」を訴える患者さんにいきなりPPIとモサプリド2剤を投与する先生がかなりおられる。


しかしこれは間違いなので、日本語を注意して読んでほしいと思う。
~の追加投与が~」と書いてあるでしょう。これはすなわち
最初はPPIのみ投与する
という事を前提としているのであり、決してモサプリドを必ず併用すべき、と言っているわけではない。



当院には「他院で良くならない胸焼け」患者は日常茶飯事ですが、
PPI + モサプリドクエン酸塩
を投与されたが良くならない、神経じゃないか、と医者に言われたという人がたくさん来院されるのです。



もう一度言いますが、最初から2剤を投与するのは間違いです。
再びPPIのみにしてさしあげると症状がとれる場合がかなりある。
その場合余計な処方だった、ということです。



それはなぜなのか説明します。これはそういう主訴で来院された患者さんの写真ですが、LES圧が高いのがお分かりでしょうか。食道裂孔ヘルニアとは全く逆の状態です。





この状態にモサプリドを使ってしまうと、平滑筋が収縮しますのでもっと食道のつまり感が出てしまいます、と説明すればわかりやすいでしょう。実際には縦方向の筋収縮も重要だとされているので、内視鏡検査の結果は必ずしもあてにはなりません。そこは注意が必要です。


なぜモサプリドが「慢性胃炎」に適応があって、「逆流性食道炎」には適応がないのかもこれで見えてきます。逆流性食道炎にはモサプリドが効く症例と悪化させる症例とがあるからです。この方は後者です。PPIとモサプリドが見事に相殺されて効果はないのです。きちんと症例をセレクトすれば第三相はうまくいくでしょうが、患者の選択を誤れば、治験では良い結果が出ないだろうと思います。


最後にもう一度申し上げますが、モサプリドはPPIだけでは症状が改善しない逆流性食道炎に効果がある場合がある、という事実を自己流に解釈して、PPIとモサプリドを最初から投与するのは間違いだと思います。最初はまずPPIから、が基本です。
(PPIにも4種類あって、どれが効くかは患者により違いますがそれはまた別の話です)

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