2012/01/08

QC(医療従事者における)

大学院で実験をしているときの話。
様々な測定をするわけですけれど、その測定が正しいかどうかを定期的に検定する作業がありました。正確には自分で行っていたわけではなく、熟練のテクニシャンがして下さるわけです。私はその統計処理の手伝いを少しだけしましたがほとんど横で見ているだけでした。

Quality Control(クオリティ・コントロール/品質管理 略してQC)という作業です。

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4年の大学院を終了して、勉強はしたものの実験の成果を出すことは出来ませんでした。ただ、当時のテーマは内臓脂肪細胞からのサイトカイン放出、例えばTNF-αを基礎とするものでしたがその概念は20年経った今でも色あせるどころかますます輝きを増しており勉強しておいて本当に役立ったと思います。(IRHIOなどといったあまり日本では話題にも上らないテーマをこのブログに書くのもその影響です)

さてQCに話を戻しますが、医者ほどQCが重要な職業もないだろうと思います。ですからいかにして医療の質を向上させて保つか、を真剣に考えねばなりません。
専門医という制度は役に立つかもしれません。
が、それは「一定のレベルに達した(人生のある時点で)」という事を表しているに過ぎません。
それではつまらないではないですか!

大学病院や大きな病院では人と比べる、という事が容易です。
例えばカンファランスなどで議論する。多くの医師や医療従事者、患者から評価を受ける。
そうしたことで相対的な自分の位置はわかりやすいのです。

では医療を個人の医院で行う場合はどうなのか。
自分の実力は評価できるのか。
ということを考えてきました。


  1. 患者の反応で測定する方法。
    • 私の父はいつも20年ぐらい医療を先取りする人なので偉いなと思うのですが、どう患者が反応したかどうかをデータベースに入れていたわけです。上部内視鏡検査のときに鎮静がかかりすぎた場合は0.9、全く反射がない場合は1、のどの挿入時に一回だけゲーと言った場合は1.1、内視鏡の最中にずっとゲーと言っていたが検査に支障はないのが1.2、体動が激しいのが1.3、手が出て内視鏡に支障があったら2、あばれちゃったら3、検査が中止になったら5と言う風に。下部内視鏡検査では痛みを訴えなかったら1、一回だけ「いてっ」と言った場合は1.1、辛そうにしていたら1.2。下部内視鏡検査は辛そうだとすぐにやめてしまうのでそれ以上はありません。
    • 毎年2000を超える内視鏡があるのですが、「果たして自分は良い内視鏡が行えているのか」と自己評価するのです。
  2. ある所見の分布で測定する方法。
    • 胃の粘膜を木村分類で評価するのですけれど、この分布が偏っていないかどうかを自己評価します。もちろん患者数が多いから出来る手法ではあります。
  3. ある所見の検出頻度で評価する方法。
    • 胆嚢ポリープなど一定の確率で出現する所見がちゃんと拾えているかどうかで評価する方法です。上部内視鏡の場合は胃底腺ポリープ(C-1の胃における)の出現頻度が女性で60%を超えているかどうかというのを指標にはしています。大腸においては結腸憩室の頻度が40%に近くなっているかどうかを指標にしています。結局たくさん検査をするから可能になっています。
  4. 長期予後を見る方法。
    • 見落としがなかったかどうかは10年以上長期にわたって患者さんをフォローすることで評価が可能になります。そのためには患者さんを逃してはなりません。そのためには良い医者でなければなりません。ということで、結局高い質をキープしなければ可能にはなりません。電子カルテなので予後を聞き取り調査しやすく、たいへん重宝しています。
  5. 経済性の評価。当院は安いのも取り柄なので。
  6. 患者満足度(リピート率)の評価。決して広告やDMを出さずに来るかどうか。
  7. 今後はスマートフォンなどを使ってリアルタイムにコメディカルや患者がこれらの評価に参加することとする。


これらは今自分で行っているわけですが、電子カルテが勝手に行って医者に限らず医療従事者を評価するようになる。
というのが私の未来像です。
こういうことを10年前からやっていましたので、自分にとっては電子カルテを使わない、というのはありえない話なのです。

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