患者さんから様々なダイエットに関する質問を受けます。ちなみに私の仕事は、「食べろ」と指導する事がメインです、胃腸の医者ですから。だからダイエットに関して質問するのはそもそもおかしい、という前置きはおいておいて。
基本的には、カロリーを制限した時の合併症に対処出来ているかどうかが、でたらめな嘘ダイエットと、多少は考えたダイエットとの境目です。
さて、ダイエットの反動(合併症)には何があるのでしょうか。
食事制限すら出来ない人々は、以下を読む必要はありません。
食べながらダイエット、そういうキャッチーな宣伝文句に吸い寄せられていけばよろしい。
1)カロリーを制限すると、胆石が出来ます。
実際、食べないでいますと胆嚢は収縮しませんから、胆汁が胆嚢の中で濃縮しますので結晶となり胆石が出来ます。そしてダイエットの反動で食べ始めたときに発作が起きるのです。考えなしで行ったダイエットの代表的な合併症と言えますが、多少考えているダイエット考案者はさすがに勉強しておりこれに対応しております。すなわち、①オリーブオイルなど、胆嚢を収縮させる油脂を一日一度は摂取するよう義務付ける、②リンゴ酸など、胆汁内のコレステロールを溶かす食物を摂取させるよう義務付ける、のうちのどちらかです。
2)カロリーを制限すると、ビタミン、ミネラルが不足します。
腸内細菌がビタミンを作ると言いますが、これは嘘ではありません。しかし、腸内細菌はビタミンを産生する以上に消費してしまうというデータもあるとされ、しかも腸内細菌の主な活躍場所である大腸ではビタミンが吸収されると言う話は聞きませんから、腸内細菌ビタミン産生説を唱えるダイエットは、ちょっとおかしいんじゃないかという印象を受けています。カロリーを制限した食事では十分量のビタミン、ミネラルを摂取することが難しくなりますが、これにどう対処しているか、対処しようとしているか、それがでたらめなダイエットかどうかを判断する基準になります。
3)カロリーを制限すると、筋力がまず低下してしまいます。
ダイエット中には、CPKとFFA、それからケトン体の血中モニタリングが欠かせません。その意味がわからない医師は、そもそもダイエットに関して何にもわかっていませんから、試しに質問してみるのも一興です。脱線しましたが、食事制限は重要であってもいかに筋力を維持するかを考えたプログラムでないと、結局基礎代謝が低下してしまいます。
4)カロリーを制限すると、身体が酸性に傾いてしまいます。
脂肪が分解されるとケトン体となりますから、これが酸性に傾く原因なのですが、十分量水分をとって尿として出してしまわないと、心臓が止まってしまったり危険です。したがって、どのように身体をアルカリ化するか考えていないプログラムはやはりいい加減であると言わざるを得ません。
というような事を基準に、そのダイエットが、まあ取り敢えずは十分な経験に基づいたものなのか、ただ考えついたのかを判断することは可能です。やってみたら大失敗を繰り返すのがダイエットと言うものです。十分経験を積み実績があると言えるダイエット方法は、胆石が出来たと文句を言われたり、栄養不足でいろいろな症状が出たり、あるいは不整脈が出たり、様々なトラブルを乗り越えているはずです。
実際には、患者さんを見ていると、いくら彼等ががんばろうとも、私の基準から見ますと食べ過ぎなので、以上の合併症を心配したことはただの一度もありません。
「食べてないのにやせない」という良くある訴えをでたらめだと言うのは簡単なのですが、そういう素直な印象を述べるのは我慢して、取り敢えず患者さんに害をなすようなダイエットには取り組んで欲しくないなと思う日々の診療であります。
以上は私自身のVLCD治療経験に基づく一意見です。
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