2009/07/25

PPIと膵炎

心窩部痛にニトログリセリンが効いて、それが実は胆石だったとか、逆流性食道炎だったとか言う話は以前からありますが。

心窩部痛にパリエットが効いて、それが実は膵炎だったときには案外しゃれになりません。

なので、逆流性食道炎のファーストチョイスは最近PPIじゃなくなりつつあります。

ちなみに逆流性食道炎に効く薬は沢山あります。

PPI・・・萎縮がない人とか除菌後の人に適応があると思います。(もちろん例外あり)腎障害があるときにはH2RAよりも使用しやすい薬です。各種のPPIで薬剤への感受性、薬価は違うのでその特徴を見極めながら各人にあったPPIを投与するのが通だと思います。PPIを使用しすぎた時の胃や消化管内での雑菌の繁殖、骨粗鬆症の悪化には注意しています。

H2RA・・・夜間の酸分泌はヒスタミン依存です。夜間の酸分泌を抑えたい時にはPPIよりも効果があります。また効果の立ち上がりが早いので、ファーストチョイスとしても良い薬です。使用方法はその切れの良さもあり、オン・デマンドです。PPIほどではないけれど、カルシウム吸収を抑制します。プロテカジンには逆流性食道炎の保険適応はありません。

制酸剤・・・これらの中にはカルシウムを吸収しやすくする薬があり、PPI、H2RAの悪い効果を帳消しにしてくれるかも。と言うことで併用すると良いことがあるかもしれません。速効性はあり、痛み、しみる、などの症状をすばやく取ってくれる場合があります。

蠕動促進薬・・・ガス◯チンは全く悪化させることがあるので要注意です。患者さんは黙って逃げます。逆流性食道炎には、食道が痙攣するタイプとそうでないタイプとがあります。便秘に麻痺性と痙攣性があるのと似ています。痙攣するタイプの患者さんに投与すれば症状を悪化させます。これを理解しないで全員にこの手の薬を処方しておいて不思議がっていてはいけません。そういう患者さんには逆にブスコパンを処方して効くことがあるのです。頭を柔軟にしましょう。

私の隠し玉・・・ガスコン。要するに逆流性食道炎の生理は単純ではないのです。どうして大して圧もかかっていないのに、胃からのどへ胃酸が逆流するのですか?そんなのおかしいではないですか。LES圧が低いだの高いとか言う前に物理的にどうして逆流するのか、考えなければ。考えられるとすれば表面張力です。つぶれた食道内に胃酸が進入した時、比較的すばやくのどまで上昇してくるとすれば、それは表面張力によります。したがって、ガスコンで表面張力を下げれば良いのではないか。のどの症状や咳が強い患者さんには試す価値がある投薬だと思います。

アルギン酸・・・アルコール飲みすぎて味覚障害などある場合には、その微妙な甘みをまずく感じるらしく恐ろしくコンプライアンスの悪い薬ですが、この薬でないとコントロール出来ない場合があり重宝しています。人工イクラの原料です。イクラは胸焼けを悪化させるのに、人工イクラは胸焼けを軽快させる。人工なのにイイやつです。

他にも挙げればきりがないのですが、内視鏡時に食道を洗浄した水の挙動(流れ具合)も結構参考になることを追加しておきましょう。

結論から言えば、沢山の患者さんが来院されますが、シンプルにPPIだけ服用している患者さんは、当院では稀です。まずはダイエットからはじめます。あと、下手なウェイトトレーニングをしている方も多いので注意しています。

膵炎の話のはずでしたが、いつのまにやら逆流性食道炎の話になってしまいました。慢性膵炎はアルコール性が多いのですが、自己免疫性とやらも増加しつつあるようです。まだまだ診断・治療に進歩が望める病気です。

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