2014/10/28

Q:なぜ、除菌後一年で、内視鏡をしたほうが良いのか。

A:それは、呼気テストが正しいとは限らないからです。



例を挙げて説明しましょう。



この方は萎縮はC-3としましたが、ザラッとした感じ、穹窿部の発赤、粘液あたりの所見から、内視鏡的にピロリ菌がいるのは確定です。そして迅速ウレアーゼテストは陽性でした。

ランサップ400で除菌をして、3ヶ月後(偽陰性を少なくする目的で当院では1か月後ではなくて3ヶ月後に呼気テストで見ています)のUBTは1.3‰であり、陰性でした。

そして一年後に内視鏡を行うとこういう所見でした。



残念ながら胃炎はあって、発赤、粘液が目立ちます。萎縮はO-1としました。内視鏡的にはピロリ菌は陽性です。そしてもう一度UBTを行うと9.6‰であり、陽性でした。これは再感染の可能性もゼロではありませんが、それよりは3ヶ月後のUBTが偽陰性であった、と考える事が妥当です。

UBTは感度、特異度が95%ですから、5%にはこうした事が起き得ます。



みなさんには以下の意識を持っていただきたい。

1)除菌が成功した、と言われて、また陽性、と言われても慌てる必要はありません。

2)除菌をしたからといって終わりではありません。きちんとしたフォローの内視鏡を受けましょう。

2014/10/10

ピロリ菌の除菌で過形成性ポリープは縮小する

胃腺窩上皮過形成性ポリープは、ピロリ菌の除菌で縮小します。



ポリープからの出血のため、相当の貧血を呈したこの患者さんでは、しかし、容易にポリープ切除が出来ない原疾患があったためまず除菌を行いましたが失敗し、二次除菌を行いました。


すると二年でここまで縮小しています。個人的な経験では幽門付近の過形成性ポリープは縮小しない例があります。これは蠕動に伴う刺激のせいなのでしょう。

2014/10/07

気圧が低いとどうして調子が悪くなるのか

気圧が低い時には身体の調子が悪くなる人が多いのですが、それをどう解釈すれば良いのでしょうか。


単なる酸素不足でしょうか。普段の生活で非常に酸素供給を必要とする部位を持っていて、そこが悲鳴を上げるのでしょうか。


ご存知のように、潜水病の治療には高圧酸素療法が行われます。これは毛細血管で実際に窒素が気化するから起きるわけですが、そこまで行かずとも気圧が下がった時に窒素が気化しそうになる状態、これが不調の原因とはならないだろうか。気化する手前で一対何が起きているのか。


身体のありとあらゆる液体には、酸素や窒素が溶け込んでいます。骨の組織の間質までも。気圧の変化が起きると、それらは緩やかに変化していきます。その分圧の変化が身体に変調を起こすのではなかろうか。窒素分圧の高い間質と窒素分圧の低い血液との間で何か起きるのではないか。NOは非常に血管を広げる作用があることで有名なのですが、血液中でNOが増えるとか減るとかするんじゃないか、感覚的にそんなことを考えてしまいます。


一方で、身体の中の閉鎖腔、例えば乳突洞がそうですが、そこでは低圧でもとからある空気が膨張して不調の原因となりそうですし、副鼻腔が閉鎖している場合にも同様に内部の空気が膨張し、頭痛の原因となったりしそうです。


それらは時に交感神経系に刺激を及ぼすかもしれない。そこでアレルギーや自己免疫疾患など、白血球が関与する疾患は交感神経系の影響を強く受けるので不調の原因になるかもしれない。


また、気圧が下がると外界にも気圧以外の変化が生じます。PM2.5の量は大きく変化するでしょう。これが不調の原因となり得る可能性がある。一方温度や湿度も影響をおよぼす可能性があります。


では、それらの症状を抑えるにはどのようにすべきなのか。


1)酸素:酸素は減圧による影響に対して一定の効果があるだろうと予測します。
2)交感神経系を賦活する:緊張状態は症状を軽くする可能性があるかもしれない。
3)Skins、CW-Xなどのスーツ:これらの圧力は症状を緩和させないか。
4)ネブライザ:副鼻腔、耳管などのトラブルについてはこれを緩和できないか。
5)PM2.5対策:雨の日に雨宿りしている人がタバコを吸うのは周囲への影響も普段以上なのではないか。


「気圧が下がると調子が悪い」はただの都市伝説とは思えません。意図的に順応を計れば大丈夫、という人が多いのは交感神経系が影響するからかもしれません。それを排除して前向き研究をする、というのは非常に難しいため、「減圧室で研究」などというのはナンセンスな話です。かといって、これほど「気圧が下がると調子が悪い」という考えが広がっていればバイアスは避けられない。こうした風説がない国でライフログをとる、という方法しか考えつきません。

2014/10/01

PPI + モサプリドクエン酸塩を最初から同時投与してはならない

モサプリドクエン酸塩の追加投与がPPI抵抗性NERD患者に有効



という、報告を見て、初診の「胸焼け」を訴える患者さんにいきなりPPIとモサプリド2剤を投与する先生がかなりおられる。


しかしこれは間違いなので、日本語を注意して読んでほしいと思う。
~の追加投与が~」と書いてあるでしょう。これはすなわち
最初はPPIのみ投与する
という事を前提としているのであり、決してモサプリドを必ず併用すべき、と言っているわけではない。



当院には「他院で良くならない胸焼け」患者は日常茶飯事ですが、
PPI + モサプリドクエン酸塩
を投与されたが良くならない、神経じゃないか、と医者に言われたという人がたくさん来院されるのです。



もう一度言いますが、最初から2剤を投与するのは間違いです。
再びPPIのみにしてさしあげると症状がとれる場合がかなりある。
その場合余計な処方だった、ということです。



それはなぜなのか説明します。これはそういう主訴で来院された患者さんの写真ですが、LES圧が高いのがお分かりでしょうか。食道裂孔ヘルニアとは全く逆の状態です。





この状態にモサプリドを使ってしまうと、平滑筋が収縮しますのでもっと食道のつまり感が出てしまいます、と説明すればわかりやすいでしょう。実際には縦方向の筋収縮も重要だとされているので、内視鏡検査の結果は必ずしもあてにはなりません。そこは注意が必要です。


なぜモサプリドが「慢性胃炎」に適応があって、「逆流性食道炎」には適応がないのかもこれで見えてきます。逆流性食道炎にはモサプリドが効く症例と悪化させる症例とがあるからです。この方は後者です。PPIとモサプリドが見事に相殺されて効果はないのです。きちんと症例をセレクトすれば第三相はうまくいくでしょうが、患者の選択を誤れば、治験では良い結果が出ないだろうと思います。


最後にもう一度申し上げますが、モサプリドはPPIだけでは症状が改善しない逆流性食道炎に効果がある場合がある、という事実を自己流に解釈して、PPIとモサプリドを最初から投与するのは間違いだと思います。最初はまずPPIから、が基本です。
(PPIにも4種類あって、どれが効くかは患者により違いますがそれはまた別の話です)