2010/10/22

潰瘍性大腸炎


かいようせいだいちょうえん【潰瘍性大腸炎】という病気をみなさんご存知でしょうか。
説明はこちらをクリック→難病情報センター

少し家族内発生もありまして、お嬢さんが罹患した後にお父さんが発症し…という事も経験します。
それは置いておいて年間何人も経験する病気です。

■慢性の下痢がある
■血液が混じるようになってきた
■なんだかゼリーのようのものも出る

という症状がある場合、この病気かな?と思って検査をします。


こういう症状が出る他の病気として、

「アメーバ赤痢」…これは日本では性行為感染症であることが多いのですが、海外渡航でも感染するようです。この病気があるときに肛門性交の有無も伺いますが、怒りだすと尚更疑われますから冷静に事実をお答え下さい。セクシャル・パートナーとピンポン感染されると困るのです。

「非特異的大腸炎」…潰瘍性大腸炎と確定できない、程度の軽い直腸の炎症がこう呼ばれることが多いです。

があります。腹痛があるとか、強い症状があったりするとクローン病とかベーチェット病なども考えます。いずれにせよ大腸内視鏡をしてしまえば多くの場合(少数の例外もある)診断は付くのですからあまり深くは考えません。


でも当院では潰瘍性大腸炎の治療はしないのです。上部消化管が専門だから。ただし緊急でない場合、最初から専門の先生に紹介せずに当院で最初の大腸検査をする場合があります。むろん患者さんには検査をするかどうか伺いますが結局当院で最初の検査を行う場合があります。

<その理由>
  1. 当院であれば緊急枠に融通を利かせて(時間外労働を私とナースがすれば良い)早く初回の検査が出来るでしょう。(潰瘍性大腸炎を疑わなければ大学と同じぐらい待たされますが) 
  2. 検査を怖がっている方が多いので、とりあえず私は優しいですし、苦痛が少ない当院の検査を経験していただいて悪い先入観を取ることが出来れば良いな、と思うからです。痛く無いということは穿孔も少ないという意味で、炎症の程度がわからない初回の検査では重要なことです。(下剤による前処置を安全に慎重に行うことも大切です) 
  3. 当院で初回の検査を受けて専門の先生にあとで受診するという形にしておけば、当院が患者さんのバックアップが出来るでしょう、将来。 
  4. 私が潰瘍性大腸炎について話すことで患者さんの心理的なショックを多少和らげることが出来るでしょう。 

私は上部内視鏡を専門と自称しています。一方大腸検査は岡本平次先生神長憲宏先生の手技をたくさん見る機会がありました。岡本先生は日本の第一人者だし、神長先生も日本を代表する名手です。お二人の検査は多少違うけれども本質は同じです。私は3年ぐらい見学しておりましたが何年も見続けるというのはずいぶんと贅沢な教育法です。今はハンズオンと言ってすぐに何でもやらせるのですね。しかし実習では慣れはするもののじっくり考えるということをしないので真髄にせまるという事が難しいのではないかと思います。(一方、平均的な医師を作るにはハンズオンは重要です)私は名手の検査をそれこそ千回は見たでしょう。なぜ名手は普通の医者と違うのかという事を論じさせたらうるさいです。患者さんから見たら同じでも、全然違うのですから。

師匠自慢はそこまでにして、「門前の小僧習わぬ経を読む」と言いますが、素人の患者さんから見れば名手と間違われる程度にはごまかして検査が出来るようになりました。だからだまされて患者さんがみえるのです。潰瘍性大腸炎は若い患者さんが多く、今後の人生で何回もこの検査を受けることになります。検査で苦痛があるのはお気の毒だし、しかも最初の検査で心理的なトラウマになっては大変です。ですからたまたま当院にいらしたのであれば、そして幸い緊急性がなければ、今後の治療の良い入り口になれれば良いなと考えて診療にあたっています。


さて検査の結果、潰瘍性大腸炎だとわかったとします。このとき私が話す要旨を以下に書きます。

今すでに職業を持っている人と、これから就職する学生さんでは少し人生のハードルの高さが違うかもしれません。これから就職する場合、他の人よりももっと頑張らないと不利な場合もあるからです。患者さんの学歴にあわせて少しアドバイスをする。また、患者さんにはこれから定期的に病院に通わなければならない事をまず明確に伝えます。(休みの日に外来に・・・と、治療を二番にしてしまうことを危惧します)

病状は人によって違うし、治療に対する反応も違います。しかし治療は日進月歩であって常に新しい治療の恩恵を受けて欲しいために経験豊富な専門の先生、しかも出来れば大学など大きな病院に紹介したほうが良いことを伝えます。むろん個人の先生でいい先生もおられます。個人的にはリスクは分散したいのです。少なくとも医者が病気になった、などと言うことに患者さんを巻き込みたくはないのです。個人に依存する性格の患者さんはしかしやがて大学を去って個人の先生にかかる場合はあります。それはそれで良いのです。

インターネットの検索はSEO対策という方法によって、出鱈目で危険な情報が飛び交っており気をつけるべきという事を伝えます。もしもあなたが不安になることが少しでも書いてあったり、あなたがこれで治るかもなどと思ったりしたら、両方とも書き手には無知ないし悪意があると思って良い。情報の根拠がきちんと書いてあるものにのみ注目すれば良いと説明します。そして分からないことがあればむしろ我々に聞いて欲しいということを述べます。例えば検索の仕方としては、Googleでは「潰瘍性大腸炎 site:ac.jp」と検索条件をつけますと、大学病院が発信する情報のみを受け取ることが出来ます。正しい情報とは例えばこんな論文です。

ところで病因について不思議に思われると思うけれども私はアトピー性皮膚炎と非常に類似した病態であろうという話をしています。実際内視鏡像は悪くなった時のアトピー性皮膚炎と似ているし、ヘルパーT細胞が悪さをするという点で共通しています。また細菌が増悪させるという点でも同様です。劇症型があるという点でも似ています。

患者さんが不安になるだろう情報としては、colitic cancer(あえてリンクは貼りません。まだ早い)の話が避けられないのです。これが潰瘍性大腸炎を語る上での最大のハードルなのだろうと思います。大腸の切除をいずれせねばならないのか。切除したときに性腺機能が保たれるのかなど、悩みは尽きなかろうと思います。しかしそうした選択をすべき時までに、心の成長を遂げ、医師と信頼関係を築いてほしいなと思って最初の説明をするのです。

2010/10/20

萎縮性胃炎2

萎縮性胃炎とは木村・竹本分類でC-2以上(C-2, C-3, O-1, O-2, O-3)を指します。

特にC-1、C-2、C-3は萎縮をRAC(regular arrangement of collecting venules)の有無で見るのが適当です。若い女性で貧血があり、RACが見えにくいが本当はC-1であるという患者さんの胃を、「萎縮性胃炎」と記載している医師はたくさん居ます。気をつけた方が良いです。血管透見で判断すると間違います。O-1、O-2、O-3になりますと、今度はHP陽性の場合RACはすっかり荒廃してしまっている場合が多いため、襞の有無で判定する方が診断のぶれは少なかろうと思います。空気を入れすぎて全部O-3にしてはなりませんが。

重要な事:C-1とC-2以上には大きな壁がある。C-2とC-3にはある程度壁がある。O-1とO-2にはある程度壁がある。壁というのは発癌率に関してですが、つまりC-3とO-1は混同していてもかまいません。O-2とO-3も混同してかまわない。統計でOpenとClosedにわけるのはC-3とO-1の性質が似ており有意差が出にくいためにお勧めしません。

ついでに「HP陽性の印象」とか「除菌後の印象」という記載も行います。特に患者さんはHP除菌の既往歴を外来では言わない事が多いのですが、内視鏡所見で見ると一目瞭然ですから、「あなたは除菌をいつなさいましたか?」と質問をします。だいたいあっています。微妙だなという場合は確かにありますが、微妙だったら「いる」としておけば大丈夫だと思います。例外は20歳以下の子供とか、PPI投与中、H2RA投与中でしょうか。あるいはNSAIDS投与中とかアルコール多飲、タバコを吸っている場合もだまされることがあります。まあ、それでも肉眼的な判断の方が呼気テストの偽陰性で安心しているよりもはるかに有益だとは思っておりますが。

除菌後のC-2です。RACは見えません。
除菌後のC-2です。胃体中部にはRACが見えてきました。
この小さな発赤は少し判断を迷わせる。
除菌後のC-2です。胃体上部に発赤があってHPの有無が紛らわしい所見です。(この症例はアルコール+)
ここで表層性胃炎と呼ぶとHP陽性の表層性胃炎と紛らわしく、私は病名をつけない。
別の症例。ぎりぎりC-2ぐらいの所見。RACがところどころ破壊。やはり除菌後です。男性はわかりやすい。
RACは破壊されている。これだけでHP陽性と断定できるかというと難しい。
こういう発赤、あと浮腫があると、HP陽性かな?という感じ。C-2かC-3か迷うがその時の雰囲気で決める。
C-2とした。
かなりの発赤がありますね。HP陽性なんだなあという所見。
RACが胃角に見えるからC-1、しかも女性。でもうるさいこというと、Spottyに白い斑点がある。
こういうのは急性胃炎の痕だったり、NSAIDSのびらんの痕だったりもする。
周囲にHP陽性の所見もないし、過去に感染があったようなエピソードもなく、C-1とした。

一見して女性。小さな白いスポットがある。絶対C-1?と言われると困る。
しかし臨床的にはHP陰性を強調したいためにC-1と記載するだろう。
こんな感じで、ひとりひとり臨床と絡め合わせて診断していくけれども、難しいのがNSAIDSによる胃炎後ぐらいで、ピロリ菌感染の影響を除菌前、除菌後に言及しつつ記載するのは木村・竹本分類が圧倒的に便利。

除菌後特有の発赤
何年か経つと徐々に落ち着く

2010/10/15

GOTよりGPTが高かったら異常

同じ医局の坂口先生は肝臓の専門家です。(今は平塚市民病院だと思います)
先生が「GPTがGOTより高かったら、それは肝障害だよね」って仰ったのが忘れられません。

確かにGOT16、GPT10くらいが正常で、GOT20、GPT24だと必ず何か理由があります。
例えば栄養の取り過ぎとかウイルス感染とか薬剤性の上昇とかアルコールです。

当院ではGPT39までが正常値だったはずですが、B型肝炎でGPT30超えたら核酸アナログの適応ですから、全然39は正常ではありません。





というのが前振りです。

私が「検査結果は持ってこられましたか?」とお聞きしたときに、

「正常でした」と答えるのはやめていただけませんか?より深くあなたを診察するためのささやかなお願いです。

2010/10/07

リスクの細分化が医師のストレスをモチベーションに変化させる話

今日は田園都市線が停電で遅れてしまい、私は少し遅れて検査室に入りました。

「お、除菌後だね」と私が言います。画面には患者さんの胃の前庭部(出口のそば)が映っていました。私は除菌後かどうかは高確率でわかるのです。

今日の検査はT医師担当で、内視鏡医としてはまだひよこちゃんですが、それでも世間一般のレベルからすれば立派なものです。私はT医師の後ろに立ってあれやこれや思ったことを言う係です。

患者さんのカルテにはしかし、ピロリ菌を除菌しただなんて一言も書いてありませんが、私はそんな事実は全く気にせず検査が終わった患者さんに聞きました。「いつ除菌をなさったの?」

患者さんは「2年前かな…」と仰いました。T医師は少し驚いた様子で「いきなり除菌後と言いましたがどうしてですか?」と聞きました。良い質問です。

「前庭部にまず浮腫がない。そして淡い発赤のこういう散在の仕方は除菌後特有だ。一見して『きれいだな』という印象。むろん前庭部だけで決めるわけじゃないけれど、その他の部分に特徴があらわれているか、最後は総合的に判断するわけだけれどどうしてそれが重要かわかるかい?」

「わかりません」と彼は答えました。私は常々「ピロリ菌がいるかどうか、木村分類で背景粘膜を目で診断するのが内視鏡の基本」と言っています。その理由を話さねばなりません。

「君は検査をする時に『癌を見逃しちゃいけない』と思って検査をしていないかい?ところどころで私はそういう印象を受けたけれども」と私は言いました。彼はそうだと答えました。



以下、私の話。

まず高分化腺癌。これはね、絶対に見逃さない。見逃すはずがないと思って検査はするべきです。
5mmあればまあ確実にわかると思っていい。それ以下のもモチベーション次第で見つかるでしょう。
だから全然プレッシャーを感じる必要はないでしょ。
高分化腺癌が出て来やすいのはピロリ菌が現在陽性あるいは過去に陽性だった人ね。
むろん木村分類で萎縮度が進行するほどリスクは高い。アルコールや塩分、タバコによってそのリスクはさらに上昇する。でもまあ、見逃さないから。
全くその範疇にない人に高文化腺癌があっても「おかしいな」とは思うから。
(見逃す場合があったとしても、以上のような高リスク群の人は毎年内視鏡をしていれば、毎年見つかるチャンスがあるので大丈夫)
リスクをしっかり見分けることで、プレッシャーは軽減されるわけ。

じゃあ、ピロリ菌がいないなってわかったとするでしょう。除菌後は腺癌は少なくなるのはわかってる。これだけでずいぶんプレッシャーが軽くならない?
逆に、低リスクの人たちから癌を見つけたらウルトラCでしょ。うれしいでしょ。
自分の仕事のプレッシャーを、「ここで癌見つけたら自分すごくない?」っていうモチベーションに変化させるわけ。リスクがやや低い人を見つけたらそれこそ「やってやろう!」ってファイトがわいて来ない?
自分はわいて来る。
リスクをしっかりと見分けることによってプレッシャーがモチベーションに変化するのね。これすごく良い話でしょ。
ポストピロリ時代になって、除菌後の胃癌の形態もだんだんわかってきているから尚更大丈夫。もちろん沢山の症例を見る必要があるから積極的に学会やカンファランスに参加して勉強していないと自信はどこかに行ってしまうよ。

これでプレッシャーの2/3は解決できた。
あとはピロリ菌がいて、高リスクでっていう人の低分化腺癌をね、ちまちまと見つけりゃ良いわけ。
褪色の陥凹を主に見つければ良いんだから、そんなに大変じゃない。
ただね、全部癌なんじゃない?って思うような胃粘膜ってあるでしょう。しかも除菌が失敗したりして。知らないか。あるんだよ、そういう粘膜が。本当に汗かくほどのプレッシャーがかかる時があるとしたらそういう粘膜。そういう時はとにかく何か見つけて次につなげる。例えば腺腫を見つけてね、それでまた次回詳しく見る。その繰り返し。とにかく怪しいけどわかんないって時には検査をそのままでは終わらせない。そういう地道な努力が結局は報われるわけ。

そう考えるとプレッシャーなんかなくなって、あとはモチベーションしか残らない。
自分は癌を見落としたらどうしようなんて、考えたこともない。昔は考えたけれど。
ピロリ菌がいるかどうか、背景粘膜がどうか、それをきちんと捉える目を持てば、診断において医者は開放された状態になるわけ。だから早くそれを見分けられるようになりなさいって指導してるんです。わかりましたか?

2010/10/06

社会人になって、のどから風邪を引きたくない人が実行すべき事

のどからの風邪の定義モドキ

風邪のウイルス、例えばライノウイルスなどは空気中に飛沫として漂って(ぷかぷか浮かんで)いたり、あるいはあなたが触る色々な場所に付着していたりするのでしょう。それは主に人から人への感染だと思う。それがのどの粘膜に付着したときに、のどの粘膜とウイルスの表面とが親和性(くっつきやすい)があると、そこからウイルスが侵入して増殖をはじめます。これがのどの風邪です。

風邪にかかりにくい人がいる。私が思うに、のどの粘膜の表面の性状が風邪のウイルスと(ミクロの世界ですよ)くっつきにくい人がいるのがひとつめ、のどの粘膜はIgAという抗体が守ってくれるのですが、たまたま幼い頃に引いた風邪の種類が良くてスーパー抗体(広く色々な種類の風邪に効く抗体)を持っていて、のどへの付着を防いでくれるのがふたつめ、というような理由によると思います。

<風邪にかかりやすいとはどういうことか>

ひとつの理由はウイルスに暴露されやすい環境にいる事です。例えば銀行員都市伝説かも知れません)。ただ社会生活を営む以上、ウイルスに暴露されないことは困難です。大学で風邪が流行ったりするのは、ちょうど年齢が若いことと、感染防御に対する意識が欠けるという事が重なるからでしょう。従って啓発は重要であり、たとえばインフルエンザの防御に関しては京都大学の保健室のホームページは良くできています。ちなみに慶応大学の保健室のホームページはこちらです。両方とも良くできていますが、みなさんのニーズを満たしているのかどうか。ポータル(表玄関)としての出来は今ひとつかもしれません。こういう隙を見つけたら、むしろみなさんが役立つ番(例えば新しいホームページを提案する)ですから頑張って下さい。

ふたつめの理由はウイルスがのどにアプローチしやすい理由があることです。
手洗いはちゃんとしてありますか?ジュースの回しのみをしていませんか?おはしを共有したりしていませんか?普段鼻呼吸をしていますか?おしゃべりに一生懸命になりすぎると鼻呼吸を忘れてしまいますよ。鼻はちゃんと通っていますか?(副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎などがないですか?)寝ているときに口を開けていませんか?通常、ライノウイルスは33度以上ではあまり増殖しないのだそうです。従って口です~す~息をしている方が粘膜の温度が下がるのではないかと思いますし、実際口呼吸をしている人の方がのどを痛めやすいと思います。もともとのどを保護している粘液が乾いて荒れやすい、そこに病原菌が付着したりウイルスが感染しやすいという理由があるのだと思います。

みっつめの理由は(すでに上にお示ししたような)免疫反応には個人差があって、例えばもっているIgAが多少不利であったり、唾液が少なかったり、あるいはあまりご飯を噛まない人でそのために唾液が相対的に少なかったりという理由があるのかもしれません。

<風邪の予防は出来るのか>

口からウイルスが入らなければ良いのですから、あちこちに触った手でものを食べたりしない、鼻をほじったりしない、ましてや爪を噛んだりしないなどの注意は最低限必要です。手はいつも洗っておきましょう。飛沫に関しては避けようがないと思いますけれど、空調の方向に注意しなるべく教室内では風下に座らないなど気をつけると良いかも知れません。ウイルスに暴露されてから15分以内ならば「塩水によるうがい」で感染予防ができるらしいですから、まめなうがいは効果があるでしょう。

<なぜお休みの日に熱が出るのか?潜伏期間を逆算するといつも水曜日あたりに感染しているのか?>

風邪を引いても交感神経系が興奮していると症状が出ない、気づかない、ということは日常茶飯事なのかもしれません。風邪の引きかけに麻黄湯、葛根湯という処方はエフェドリンを使用して交感神経系を興奮させておくという処方なのでしょう。これがお休みで副交感神経系が優位になりますと症状が出やすいのかもしれません。

<他にないの?>

なんだ、これだけか、と思うでしょう。
人により少し対処方法を変えますが、大体このくらい地道です。一次予防なんてものは。

では個別にどんなアドバイスをすることがあるのでしょうか。過去を振り返って、そして自分の経験からいくつか書いておくことにします。効いたよ、効かないよ、教えて下さい。

■マウスピースは効果がある場合がある。
口を開けて寝てしまうタイプの人には効果のある方法がこれです。実際自分も入れて寝ていた時期があります。口が渇かなくて良かったですよ。
■鼻づまりを治す。
鼻づまりがある人なら、耳鼻科に行けばムコダイン・オノンぐらいは処方して下さるかもしれません。判断は専門の先生にお任せしますが。(注:抗ヒスタミン剤出されまくって、逆効果だった人も)
■イソジンうがいぐすりは避けた方が無難。
塩水の方が確実です。もともとのどが乾いて荒れている場合はそれを悪化させるので止めた方がよろしいです。http://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(05)00258-8/abstract
■ガムデンタルリンスノンアルコールタイプは効く。
イソジン同様、アルコール入りのマウスウォッシュは全部使ってはいけません。自分が使ってみて一番良かったのがこれです。ナイトなど余計な付加価値をつけた商品もありますが、オリジナルがベスト。
■エキナセアは効いた。
エキナセア入りのお茶などが売っていて、そんなに高価ではないけれど、効いた気がしました。どうしてかは知らない。
■カテキンとかプロポリスは自分はだめだった。
吸着作用のせいか、のどがかさかさしちゃってだめでした。プロポリスはのどがさらに荒れた気になって自分はだめでした。殺菌作用はあるはずなんですが。
■マヌカハニーは効いた。ハチミツも効く。
自分は効きましたね。高いけれど、マヌカハニー。でも偽物もあるかもしれないなあ。
■亜鉛は効いた気がする。
アメリカに良くあるんですが、風邪に亜鉛のサプリメント飲むんですよね。まあ過剰な免疫反応を抑制するだけかも知れないけれど。
■ビタミン類は効いたかどうか、わからない。
もともとビタミン慣れしてるせいか、自分には効果不明。ドリンク剤は中のカフェイン頼みですが、極量近く入っているエナジードリンクと、葛根湯などを組み合わせるのは大変危険だと思いますね。吐き気があったら過量投与です。
■ミントなどハーブ類は効く。
咳も止まりますしね。エッセンシャルオイル吸いすぎるとのど乾きますけれど。
■ヴェポライザーはもってます。
ヴェポライザーって吸入器の事。電機屋さんで売ってますよ。結構やってます。
■ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏は好きです。
漢方薬なんですけれどね、麻黄湯とか葛根湯も使いますけれど、のどが痛いときには結構これです。
漢方薬局でも買えますが、「高価な」薬ですよ。
■鼻うがいも好きです。
鼻咽腔炎というのがあって、のどのちょっと上、鼻の裏側あたりが痛いときにはこれが効きますね。
塩水でうがいして下さいね。

とまあ、全部じゃないんですがリストにしてみました。
神経症的に多いですね!自分でもあきれました。
しかし、アメリカに留学している間、風邪で医者なんか行けないわけで、自分で研究してやってみた結果がこれです。市販の薬を入れてませんが、抗ヒスタミン薬が大嫌いなので私はお勧めしません。鎮痛・解熱薬は市販のもので良いと思います。抗ヒスタミン薬が入ってない風邪薬として有名なものは改源でしょうか。

ご参考になれば幸いです。

2010/10/04

二つの脳

「下腹部の痛み」を訴える患者さんが来院された時、下腹部のどこがどう痛いのか、という事をヒントにしながら考えるのですけれど、たくさんの病気がありすぎて最初は忘れているものも多いのです。

膀胱と膀胱周囲(前立腺を含めて)が原因である場合。
血管が原因である場合。
筋肉や骨が原因である場合。
子宮や子宮付属器が原因である場合。
小腸が原因である場合。
結腸・直腸が原因である場合。
それ以外の原因。

それらを思い出させてくれるのが自分にとっては超音波検査で、見ているうちにやっと色々な鑑別診断が頭の中に浮かんできます。こう書くと頼りない医者なのですが、本当に自分で検査をしなければ診断できないという情け無さであります。

このところ下腹部痛といえばS状結腸の痛みが連続していたので、患者さんの病歴を聞きながら病気を絞り込んでいこうとしてもどうも絞りきれ無い違和感を持っていたところが、実は痛がっているのは右だった、というオチでずっこけてしまいました。

触ればすぐに「あ~あ~」とわかるのですが、どうも「下腹部痛」と患者さんが仰ったのでそれを真ん中だと思い込んでしまったのは失敗でした。そんな事も、お腹を触ると明らかになりますので診察は取り敢えず全員やっとけ、と思います。

右だとわかり、一ヶ月も持続すると聞けばキャンピロバクター腸炎だとかの鑑別診断が思い浮かんで、あるいはベーチェットかもしれませんけれども、まあ原発性硬化性胆管炎だって良いわけですが、腸結核だってありますよ、ずいぶん色々でますね…、とにかく回盲部に炎症が起きる疾患も鑑別診断に入れれば良いわけですっきりしてきます。

さて、患者さんから一生懸命お話を聞くわけですが、これをカルテに書いたら一度忘れることにしています。
なぜかといいますと私が重要視しているのは「頭を真っ白にして得られた超音波所見が病歴と矛盾しないこと」だからです。なにも考えない状態で、「あれ?回盲部が浮腫んでないか?」と思うことと、上記の鑑別診断が矛盾しないとき、なるべく連想せずに別々の経路で同じ疾患が思い浮かんだときに自分としては診断がより強固になると感じるからです。

変な話ですが、一人の患者さんを自分の中の二人の医師が見て、別の診方で同じ結論が出れば良し、出なければ合議制、というような思考回路を使います。

意識してそうしているのではなく、私はいい加減なものですからあんまり考えておりませんで、検査の前に、それまで考えていたことを忘れてしまうからそういう事ができるのかも知れません。

三歩歩くとものを忘れてしまうニワトリ脳も、こういう時には役立つというものです。




検査が得意な先生というのは多かれ少なかれこのような思考をしているのではないか、と思います。答え合わせを無意識に繰り返しクオリティコントロールをしているのではないでしょうか。

2010/10/01

自分の常識を疑うべき時

こういう論文があるんですな。

「内視鏡の前には水を飲むべきか、ミルクを飲むべきか」

これを例えば日本の医者に見せてみる。

「あはは連中は何を言ってるんだ。検査の前にミルクだって?」

こういう反応をしてしまう人がいるかもしれません。居たとしたら私は落胆しますよ、という話をレジデントの先生に昨日していた。

当院では昔っから内視鏡の日は水分摂取必須です。水分摂取可、ではなくて必須。

バリウムの検査の時にはバリウムが薄くなる、胃カメラは吸引が出来ないため胃の中に水があると一部撮影できないという理由で飲水不可としていた古き伝統を引きずったまま、未だに内視鏡前に飲水不可という施設があるようです。当院の院長は内視鏡学のパイオニアと言える人物ですが、最初の頃から飲水可としていたそうです。(胃カメラからファイバースコープになったときに、吸引装置がついたため)

飲水不可にしてしまうと、脱水で血液が濃縮するために内視鏡時のいやな合併症である心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上昇する事がまず懸念されます。それだけにおいても、水分摂取はするべきなのです。他にも種々の理由があります。

世界的には内視鏡前には普通に水分はとっても良いという事になっている。だから「ミルクはどうなの?」という議論が出てくるのです。

したがって、「検査の前に絶飲食が普通」という間違った考えを持っていたりすると、「水?ましてやミルクだって?」とびっくりしてしまい、それでこの論文の存在意義に異議を唱えるかもしれないなと思ったのです。

自分の常識から二段階ずれたことを言う人がいるな?と感じたときには、それは自分の常識が一段階ずれているかもしれない、と疑うべき時だと思います。

当院では内視鏡時には水よりもスポーツドリンクを推奨しています。お茶やウーロン茶は推奨しません。

ところでミルクを飲んだらどうなるでしょうか。正常な胃なら、数時間前に飲んでも実は検査に影響はありません。正常な胃なら、です。つまり、正常でない胃に興味を持っている私はミルクを飲むことは推奨していません。