2009/04/28

MCVが好きです

今日は厚木飛行場で夜間訓練が行なわれているのか合衆国海軍の戦闘機が非常にうるさいです。豚インフルエンザに対応しているわけではないと思いますが。

さて、Mean Corpuscular Volume (MCV) とは、平均赤血球容積の事です。
手抜きの健康診断では結果に書いていない事が多いのですが、血算を測定してあれば計算できます。ヘマトクリット値を赤血球数で何となく割り、「高いな」とか「低いな」とかを見るようにしています。細かい数字にこだわる必要はなく、大体で良いのです。

例えばヘマトクリットが40%で、赤血球数が400万個/μℓであったらMCVは100fl(フェムトリットル)です。感覚的にわかれば良く、100以上だったらMCVが大きいと判断しています。

例えば水風船を作る工場があって、でも風船が足りないや、という時にどうやって誤魔化すかというと、ちょっとずつ沢山の水を風船に詰めてしまい10tトラックで出荷してしまえば相手にはわかりませんよね。

ここで言う水とはヘモグロビンという酸素を運ぶたんぱく質の事ですが、ヘモグロビンは足りているのに他の材料(風船)が足りない場合にはMCVが大きくなるという事です。このたとえ話、わかりやすいでしょうか。

ここで言う他の材料とはビタミンB群の事で、造血にはきわめて重要な栄養素です。

私は皆さんのMCVを必ず見ます。検診の結果が「正常・異常」という報告を口頭でする事なく必ず結果票を持ってきなさいと口を酸っぱくして皆さんにいうのはMCVは高くても低くても検診では無視されるからです。さて、MCVからは例えば以下のような事を考えます。(あくまで私の妄想ですから、あまり真に受けないように)

  1. お酒を飲みすぎている人はビタミンB群をアルコールを解毒するために消費してしまい、相対的にビタミン不足になる。この時にMCVが大きくなる。お酒を飲みすぎている人は食道癌や胃癌になりやすいので、MCVが大きい人は上部内視鏡を受ける適応がある。その前にお酒をやめてくれると助かります。
  2. ピロリ菌が居て萎縮性胃炎が高度になると、胃から分泌されるビタミンB12を吸収するための内因子という物質が不足し、結果としてビタミンB12が吸収されなくなるためMCVが大きくなる。萎縮性胃炎が高度になった状態では胃癌が増加するため、MCVが大きい人は上部内視鏡を受ける適応がある。
  3. 手術のあとで胃がない場合には同じく内因子が分泌されないのでビタミンB12が吸収できず、(内因子なんか要らないと発表している先生もおられると小耳にははさみますが、でも圧倒的に吸収量は違う)MCVが大きくなります。これはビタミンB12の注射をするための指標として大切です。(胃がない人にビタミンB12を内服で処方する事がどれだけ意味があるのかは知りませんが、結構世の中では気にせず処方されている様子です)

いずれにせよ、MCVが大きい場合には上部内視鏡を受ける適応があるのか判断する必要が出てきます。ところがMCVが大きくても、胃にピロリ菌はいないし、萎縮はないし、お酒も飲まない、ましてやA型胃炎(特殊な胃炎です)も何もないという中年以後の女性がいたりします。そういう方は大抵ベジタリアンであるとか、そこまでいかなくてもお肉を食べないという人です。ビタミンB12が不足しているのです。それはそれで、栄養障害の一つですからきちんと栄養を取りましょうと指導する事になるのです。ビタミンBの不足は、うつ状態の原因となったり、脂質代謝異常の原因となったりもするのです。

さて、血算を取りますとMCVの他に、MCH、MCHCという数字も計算できます。しかし、どうもMCVばかり見てしまうと言うのは依怙贔屓の一種です。Hb、Hct、RBCという指標があると、何となくHbという指標が依怙贔屓されるのと似ていると思います。

2009/04/27

エコーでは胃の小弯の方向が違う



エコーの画像を示します。
右側の写真。小さい水色の字でA+と書いてある部分が潰瘍です。胃は逆さになったダイアモンドリングのように見えますよね。その辺縁を撮影したのが左側の写真です。ダイヤモンドリングはちょと小さめになったもののダイヤは大きくなりました。これは潰瘍周囲の浮腫でぶ厚くなった胃粘膜です。ダイヤモンドリングは下を向いている、という事は身体では背中側に潰瘍がありますよ、という事を示しています。


場所は胃の出口のそばですから、前庭部です。前庭部の後壁にある潰瘍でしょうか?
いいえ、不正解です。

正解は前庭部小弯の大きな大きな潰瘍なのです。エコーで見ますと小弯は背側に見えるべきなのです。なぜなら大動脈ー腹腔動脈ー総肝動脈ー右胃動脈がある方向が小弯ですので、背臥位の状態で空腹であれば小弯は背側になるのが自然でしょう?背側になるのは後壁だろう、と考えるのは間違いだ、という事がわかりますか?

え?何を見ているかわからないって?

ただ、こういう立体感覚は消化管のエコー検査を行う上で重要だ、という事は知っておくべきです。



AplioXGはこういう画像もきわめて簡単に描出してくれます。高い機械を使うには理由があるのです。

2009/04/25

5月21-23日は内視鏡学会総会

5月21-23日は内視鏡学会総会が名古屋で開かれます。
四郎医師は22日に休診します。
邦夫医師は23日に休診します。
いつもの事ですが、混雑が予想されます。

2009/04/18

腰痛と便秘は表裏一体

経験した方ならわかると思うのですが、腰痛の時に排便をすると、腰がますます痛いですよね。いきめないから当然便秘になるのです。でも便秘をすると息むことが必要になりますよね。ますます辛くなる。いったいどうすれば良いのでしょうか。


[Tips] ご家族の方が排便時に後ろから腰椎を支えて差し上げると、上手くすれば無痛のまま息むことが出来るのですが・・・。

それはともかく腰痛の場合には最初から便秘する事態を想定しておかねばなりません。便を出そうと思って繊維質(例えば根菜類)を多く取ればガスが増えて腹圧が上昇し腰痛が増悪すること間違いありません。ここは普段とは逆に治療する。つまり「便秘をしてもお腹が張らないように。多少便秘することは覚悟して腰痛の急性期が過ぎるまでしのぐ」というスタンスの方がよろしいかと思います。

良くあることですが、ガスが増える類のお薬を飲んでいればそれはお休みした方が良いような気がします。それはセーブル®とかベイスン®など、糖の吸収を阻害する薬。コレスチラミン®やゼチーア®のような薬でどうなるかですが、ガスは増えなくとも脂が刺激になるかも知れず、私だったらお休みします。あとは低残渣の食事で腰痛が良くなるまでじっくりと経過を見るのが吉だと思います。

ガスコン®には消泡作用がありますが、細菌を培養するときに消泡作用がある物質を入れますと粘度が下がるために発酵しにくくなるようです。したがって私はガスコン®には消泡作用+大腸内発酵抑制作用があると考えて使用しています。(これは羊などにガスコン®を投与すると動物の体内でのメタンガス産生を劇的に減らすことが出来るという記事から勉強しました。人間でも同じなのでしょう)

乳酸菌は他の細菌の繁殖を抑えますし、発酵しても産生されるのは二酸化炭素ですからすぐに吸収されるためお腹が張りません。したがって、乳酸菌製剤とガスコン®は投与しておいた方が良いと考えています。

お腹の状態と相談しつつ、下剤を使うのか、浣腸なのか、戦略を立てますが毎日状況が変化しますのでその判断は容易ではありません。

便秘で夜中や休日に病院に駆け込むのは大変格好が良くないし、避けるべき事なので、よくよく先を見通して調節する事が必要です。便秘というのはたいそう知恵が要求される、奥深い状態と言うことが出来ます。

2009/04/13

Aplio XGと、DICOM worklist、つながる

Aplio XG と、CONQUESTのworklistがつながりました。

ログの解析では、Aplio XGからのクエリはCONQUESTが正常に受け取っていること。
そして該当者を吐き出していることまではわかりました。

東芝のSEさんにそのログをお渡しし、SEさんは手持ちのRISと、CONQUESTが吐き出すデータの違いを検証してくださいました。その結果、ISO IR 100は不要であるということで、CONQUEST側で設定を変更しました。そしてあとはstudy instance uidがあればという事でした。

study instance uidは、検証してみると1.2.392.200036ではじまればなんでも良いようですので、適当に設定するようなプログラムを作成します。

これでworklistが無事にAplio XGで表示されるようになりました。

ひとつだけ不満はreflesh modeを
clear and load scheduleではなくて、add new schedule(conventional)に固定したままSEさんがお帰りになってしまったことです。
これはclear and load scheduleでないと柔軟で使いやすい運用が出来ません。
次回直してもらうことにします。

ていうか、なんで固定にされちゃうのだろう。よほど信用されていないのでしょうね。
悪いことしそうなユーザーですからね。笑

2009/04/08

特定健診、エラーのとどめを刺す

特定健診をオンラインで請求している、特に実際には特定健診ではない生活機能評価部分を沢山オンラインで送っている当院の実績はなかなか貴重です。

最初のうちは、わざとらしく2カ月遅れてエラーを送ってくるペースに慣れず、全くエラーの原因が掴めないままにオンライン請求を続けるという醜態をさらしてしまいました。慣れてくると、エラーをわざと忍ばせて、どのような処理をしているのか探れるようにもなりました。

すると明らかに国保連合が間違っている、というエラーも見つかります。

例えば、特定高齢者候補者の場合です。これは候補者となりますと血清アルブミン、貧血、心電図検査が必須項目となり、これは詳細健診項目では無くなります。追加項目扱いになるはずなのです。ところが、実際にはどうかと言いますと、これは特定高齢者以外と同様に詳細項目扱いとしないとエラーとなってしまうのです。可笑しいですね。

次に市の追加項目です。
65歳以上ではアルブミンが追加されるのですが、説明書によれば追加項目は2058円となっています。ところが、国保連合会のコンピューター内では、1942円+114円と処理されていることがわかりました。つまり、1942円以上の追加項目がありますとすべてエラーとして判定されるということです。これは恐らくあちらが申請書を作る際に良く理解していなくてミスしたものと考えます。あるいは、当方への説明書が間違っているかのどちらかです。

わけのわからない特定健診というシステム。ようやく理解したかなと思ったころには、もう終わりです。パズルとしては悪くはありませんが、エラーなく通らないと患者さんに結果が行き渡らず不都合があります。総額が正しければ通す、(どうせ細かい仕様は説明が間違っていたのだから)くらいの姿勢を見せてほしかったなあと思います。

ところで、今回の特定健診では恐らく数百億円、お金が宙に浮いているはずです。会計上はどう処理するつもりなのでしょうか、興味があります。「使い切っちゃおう」などと他の事に使われちゃったりして。

2009/04/03

当院の寿命

特定健診のデータを使うと様々な分析が出来ます。


今回はそのデータを使用し、信頼は何年で形成されるのか、そして当院の寿命を計算してみたいと思います。

下のグラフの青線は当院の「新患数」の推移を表しています。
当院の院長は開業前、小田原で外科として相当数の患者さんを拝見していた関係で患者数が最初から多いことがわかります。そして毎年順調に新患数が減っています。2001年に上昇しているのは私が参加したからでしょうか。しかし全くの誤差範囲内であると思います。
このまま推移しますと、新患はあと10年後にはゼロに近くなるでしょう。対数グラフにプロットしてもやはり同様の結果でした。

この結果よりわかるのは、医院というのは開業からおよそ30年も経つとプラトーに達してしまい新患を受け入れることが出来ないという悲しい事実でしょう。これは当然の結果と言えますが、医師はどんどん供給されねばなりませんし、社会のためには継承するよりは新規開業の方が良いのかもしれないという事です。荒療治にはなりますが、その方が多くの患者さんを受け入れることが出来るかもしれないのです。

もうひとつの悲しい現実は、私が参加しようが全く医院としてのパワーが伸びていないという事でしょう。2人の医師が揃ったら、2倍以上の仕事が出来そうにも思いますが、なんと実際には1+1=1という結果。院長が働きすぎだという説を取りたいところですが、あまり言い訳が出来ません。


紫色の線は、昨年度健診を受けた患者さんが当院に最初に受診した年度を求め、それを新患数で割ったものです。例えば開業初年度に受診した患者さんのうち2.4%が当院に健診を受けに来ているという事を表しています。

すると開業から4年以内に来院した患者さんの数が多い事がわかります。最初に通った医院にリピートする法則でもあるのでしょうか。あるいは単純に、「近いから」というのがその理由の真実なのかもしれません。今回の数字には、「新患で受診して何年目に最初の健診に来ているか」というデータがありませんのでわかりませんが、印象からはやはり健診に来るのには、新しく受診してからある一定の年月が経ってからというケースが多いような気がします。このデータを毎年蓄積すると、「信頼を形成するには約13年を要する」などという法則を導き出せるかもしれません。