嗅覚障害はCOVID-19で断然注目されており、知るべき知識として書きます。
●嗅覚刺激療法は英語ではolfactory (re)trainingと記されます。Smell retraining therapy (SRT)とも言って、2009 年にドレスデン大学の Thomas Hummel 博士によって最初に開発されました。
●匂い分子が嗅細胞に到達できない気導性嗅覚障害は,嗅覚刺激療法の適応にはなりませんが、多くのCOVID-19感染者には適応があります。
●嗅覚刺激療法の治療の根拠はシナプス可塑性(記憶)です。シナプスでは学習と忘却が起こります。 おそらくCOVID-19では嗅覚の記憶が炎症や血流障害などで失われる場合があるのです。それを再訓練するのがこの治療です。障害が大きいと戻らない可能性はあります。
●万能ではないし、効かないとがっかりして欲しくないですが、嗅覚刺激療法によって嗅覚域値および同定能の改善が期待されます。
●必要な香りと方法:エッセンシャルオイルを用意します。
ローズ (フローラル)
レモン (フルーティー)
クローブ (スパイシー)
ユーカリ (樹脂)
・1日2回、10秒間香りを嗅ぎます。インターバルでは3回呼吸をします。少なくとも3ヶ月行いましょう。
●なぜ4種?
味覚に塩味、甘味、苦味、酸味、旨味があるように、嗅覚にはフローラル、フルーティー、スパイシー、樹脂臭、スモーキー、悪臭の6種があって、そのうちの心地よい4種が選ばれています。楽天で売っている嗅覚刺激セットはローズの代わりにラベンダーが入っていますが、ローズは高いからなのでしょうか。
●ステロイドと組み合わせると効果的?
スタンフォードの研究者が、ブデゾニド(ステロイドの点鼻)+鼻洗浄を組み合わせると効果があるとの論文を書いています。
●その他の治療は?
当帰芍薬散(これも数ヶ月してから効果が出ると言います)
亜鉛、ビタミンの補充
ミサトールリノローション
上咽頭擦過治療(EAT)
などを勧める事があります。
●あまり患者さんからは、嗅覚トレーニングを医師が勧めてくれたとは聞きません。自分で出来ることですし、いつか治るだろうと放っておくより積極的に取り組むほうが良いのではないか、と思います。
●嗅覚障害を医師に相談するまでの平均時間は数ヶ月、という報告があります。また医師側の対応も十分ではない、ともされています。これは医療の発達が「命優先」だった事の弊害です。
●こういう方法で改善した、というのがあったら教えてください。
参考:
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/lary.20101
https://www.enthealth.org/be_ent_smart/smell-retraining-therapy/
0 件のコメント:
コメントを投稿