PCRで診断された人の10%が重症化し、呼吸器をつけることになり、1-2週間で75%が亡くなるというモデルにとりあえず当てはめてみている。自分が医療崩壊を起こしたと判断するのは、このモデルでは説明できないほど死者が多くなっている場合で、今回の中ではイタリアとベルギーだ。英国、スウェーデン、米国は、ある程度コントロールされているような計算結果となる。ドイツはコントロールされている。
イタリアは、医療リソースが不足したままの状態でCOVID-19が広がってしまった国である。診断のためのPCRも十分行われているのかどうかはわからない。自分の計算では人工呼吸器のピークは4月2日で、9543台が必要だったとなっているが、第一波はピークアウトしているのが見て取れる。国土が南北に長く日本と似ている事はどういう影響があるのかはわからない。自分が子供の頃はイタリアは医者余りと言われ、医師免許を持ちながら他の職業に就いている人がかなりいたとされていた国だ。
正確なIgGテストを使った集団免疫の研究が行われて欲しい国の一つだ。
英国はイタリアとは同程度の人口でNHSという医療システムを誇る国であり、成熟した社会という印象がある。イタリアと異なるのは最初の直撃を避けたようだということで、自分の試算では必要人工呼吸器数は4月13日ごろにプラトーに達して7000台程度の状態がずっと続いている。ある程度の平衡状態にあり、医療崩壊を起こしていないような印象があった。
ベルギーは、インペリアル・カレッジ・ロンドンの数理解析チームが最も感染が広がっていると仮定していると聞き数字を拾ってみた。仮にガンゲルトやカリフォルニア、ニューヨークのデータを当てはめると国民全員が既感染、ぐらいになってしまう。神戸のデータもそのまま信用できないと思っているのは、自然免疫獲得についてはベルギーの動きが大切だから。ほぼイタリアと同じで、ピークが非常に早く来ている。ベルギーはコホート研究が非常に進んだ地域であって、今後パンデミックに対する方針を決定するときに非常に重要なデータをもたらす可能性がある。
スウェーデンはロックダウンを行わずにコントロールしている国の代表で、それを批判するマスコミもいるのだが、最初の直撃を受けさえしなければ、医療崩壊を起こさずに平衡状態を保つことができるのかもしれない。ちなみにスウェーデンは靴を脱ぐ国である。
米国は多様な国で国土が広く縦横に広がっているのが今まで挙げたイタリア、英国、スウェーデンとは決定的に異なる。すごいなと思ったのが、直撃を受けているような急峻な患者数の上昇にも関わらず、医療が破綻したと思われる死者数の増加がなくて、計算上は人工呼吸器が足りている、と私のEXCELが言っていることだ。(なんと6万台ぐらい使っている計算で、割合的にイタリア・英国の2-3倍なのだが崩壊を起こさずになんとかしてしまっている)その状態で平衡状態に達している。
ドイツは危機管理のお手本のような国だとマスコミから言われているが、本当だろうか。ヨーロッパでは最も早くにクラスターが発生した国なので、相応の備えができていたとか、ロックダウンを地方地方でまめに行ったとか、それを行う法整備が既に行われていたとか、医療が完全DPCでリソース分配が得意だとか、様々な理由があるのだろう。オーストリアと共にロックダウンの解除を行うとのことで、第二波の教師データとなるのであろう。
最後に日本であるけれど、クラスター対策をしている時期はPCRが多くなり無症状者もひっかける、クラスターがバラけてくるととたんにPCRが少なくなり、有症状の肺炎患者のみになる、という特徴がある。患者数が少ないため、結構バイアスできれいなデータにならない。今の所ある程度の平衡状態は保たれているように思えるので、6月からどのような通常診療を行うべきか、どのようなゾーニングを行うか、当院のプロトコルを決定すべきと考えている。
シンガポールはPCRの数が非常に多く見た目の死亡率は極めて低い。IgGによるデータが揃うまでは、これを逆算すると真の感染者数を推計することができ、有症状の10倍以上は感染しているかもしれないという推測は正しいのではないかと感じている。
さて、このようなデータを出すシンクタンクもある。日本は幸い他の部分で補っているものの、決定的に遅れているのは有症状であっても肺炎が起きないとPCRができず、したがってホテルなどの施設に隔離もできなくて家族に感染するのを黙って見ていなければならないという現状かもしれない。
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