2016/07/10

三原則について

Web上で「カーライトの三原則」という言葉を見て、少し違和感を感じたため、検索(ダブルクオーテーションで囲んで"カーライトの三原則")してみると3つしかなく、「カートライトの三原則」だと5件あった。いずれにせよ、知らない。
Webの情報からそのまま抜粋すると「感染症ではFe・UIBC・TIBCすべて↓。」と書いてあるのだが、これって「三原則」ではないよね?え?鉄下がる、UIBC下がる、TIBC下がる、で三原則とカウントするのだろうか。

三原則というと、
ロボット工学三原則
武器輸出三原則
防衛装備移転三原則
高校三原則
見沼三原則
近衛三原則
非核三原則
クラークの三法則
ジョン・ヘイの三原則
近代私法の三大原則

などが挙げられ、英語では three laws であろうか。
Laws of thermodynamics
Newton's laws of motion
Kepler's laws of planetary motion
などが挙がるだろう。上記と重なるが、
Clarke's three laws
Three Laws of Robotics
であるとか
Law of three stages(オーギュスト・コント 三段階の法則)
というようなものもある。

カーライトは、Cartwrightという姓であって、カートライトもカーライトも正しいとは思うけれど、そもそもCartwrightは何を述べているのであろうか。


この論文にGE Cartwrightの論文がReferencesとして登場するのがそれだろうと思われる。ユタ大学の Dr. George E. Cartwright がその人らしい。


ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、貧血の研究などにその名をとどめている先生だということだ。その彼が、

という論文を書いていてその中で、こう述べている。
慢性疾患に見られる貧血は、しばしば軽度で非進行性である。その特徴として、血清鉄の低下、TIBCの低下、トランスフェリン飽和度(TSAT)の低下、骨髄での鉄芽球の減少が挙げられ、細網内皮系の鉄は正常かあるいは上昇する。
鉄が白血球に奪われて貧血になるのだ、という事のようだ。鉄吸収が云々という議論も出てくるのであるが。

まあ、要するに、カートライトの三原則、なるものは、ない。

ただし、勉強していると混乱の元になるような記述も見られるのである。


という論文があって、その中にこういう記述がある。

1962年にCartwrightが書いた総説(Cartwright GE, Wintrobe MM. Anemia of infection. Adv Intern Med. 1962;5:165. )が慢性疾患による貧血が従来の貧血とは異なるものである事を示した初めての総説である。この慢性疾患とはもちろん"big three"と呼ばれる3つの病態の事である。すなわち、感染、炎症(膠原病などの)、そして癌である。

カートライトの三原則、という言葉はもちろん存在するものではないのだけれど、恐らくカートライトが病態を明らかにした慢性疾患に伴う貧血の原因としての"big three"がFe, TIBC, UIBCにまぜこぜになって混乱したものである、と考えるのが妥当であろう。

日本で見聞きする医学知識にはしばしばこうした混乱が見られる。鵜川医院の院長も以前、二酸化炭素に関する論文で、こうした混乱した知識がまた引きまた引きされて誤った状態のままである、ということを指摘していた事がある。これが日本語で医学を勉強する我々のピットフォールであるから、いつも心せねばならないと考える。特にかっこいい言葉には要注意であろう。

Googleによると三原則もいろいろありそうである。








0 件のコメント:

コメントを投稿