2013/06/04

質問や説明に妨げとなる思い込みについて

外来では患者さんの思い込み、先入観がしばしば医療の妨げになります。

代表的な、毎日出会う先入観としては、以下のものがあります。

1)今までずっと大丈夫だったのだから、今度も大丈夫だ。
 サプリメントや薬の副作用、食べ物のアレルギーを突き止めるための問診を邪魔します。
 長く飲んでいるから大丈夫だ、いつもは平気だから大丈夫だという思い込みは間違いです。

2)他の人が大丈夫なのだからそれは原因ではない。
 同じものを食べた人は大丈夫だから食事が原因ではないはずだと決めつけて内容を全然話してくれないことがしばしばです。




会話というのは、シリアル(連続的)に情報をやり取りするコミュニケーションですから、順番に一定の重みづけをしてしまう傾向があることを否定は出来ません。
しかしある程度複雑な情報を収集するためには、一度情報を受け取って頭の中で整理しなおさねば正しい理解はできません。頭の良い人と会話をしていると、数分前の会話を引用しながらの複雑なものになります。それによって深いコミュニケーションが出来るのですが、普通はそうはいきません。したがって図を使ったりしてコミュニケーションの助けとするのが普通です。

こうした反応をする人々は、普段複雑なコミュニケーションには不慣れなのかもしれません。そこで自分で重要だと思う事だけを話そうとしてしまう。しかしそれでは正確な情報は収集しにくいのです。

そこでこうした工夫をします。

全く脈絡のない順番で質問していくのです。アルコールを飲みますか、という質問を前の方にしてしまうとそれが原因だと医者が考えているのだと勘違いして、「私は飲みません!」などと怒り出す人さえいるので気を付けたほうが良いのです。普段は朝何時ごろ起きますか?通勤は電車ですか?など当たりさわりのない質問をしてみたり、昨日の食事はなんですか?と聞くかわりに、一昨日何か食べたか思い出せますか?などと記憶力クイズのような質問の仕方をしたりです。





医師が先入観をもって質問しているのではないか、と思われてしまう事は避けたいのです。
そして情報にフィルターをかけてしまう患者さんほど、そう思う傾向は強いと感じます。
面倒なコミュニケーションスキルなのですが、普段の外来で気を付けていることの一つです。

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