我々は患者さんが知り得ない情報にアクセスしやすい立場にあるのは事実です。したがって患者さんは自由に我々に質問していただいて構いません。しかし、
患者さんから日頃質問を受けるときに思います。
検索エンジンに入力するかのように、自分の希望する医療を指定して、「名医を教えて下さい」という質問が多いのですが、それは検索エンジン+私の主観以上の情報はありませんからつまらないです。
「大腸検査って苦しいんでしょ、それは嫌だから無痛で出来る先生を探して下さい」という質問をする方がおられますが、
「無痛x大腸内視鏡x場所」で調べれば良く、患者さんが自分で検索する以上の情報は私は持ち合わせていません。
ところが、「大腸検査って苦しいんですか?」という質問ならば違います。
「どうでしょう、人によるんじゃないでしょうか」と答えるでしょう。
「人による、とは患者?医者?」
「どちらも、ですね。でも基本的には一定レベルの医師にかかればほとんどの方が苦痛のない検査を受けられたはずです。『大腸検査は苦しい』の意味するところは一定レベルの医師にかかっていないか、患者側の問題で非常に困難な検査であったか、あるいは両方か、という場合があるということです」
「では私はどうでしょう」
「あなたはわかりませんが、55歳以下の方では患者側が原因で苦労すると言う事はよほどの事がないとない。したがって年齢やあなたの既往歴から考えると一定レベルの医師にかかれば問題なかろうと思います」
「先生の考える一定レベルってなんですか?」
「それは・・・」
というのが質問上手な方との会話です。ここで一定レベル、という言葉を2回用いていますが、一定レベル=平均レベルではない、という事には注意が必要かと思います。ここから一定レベルの意味や、そうした医師を探し出すための方法を引き出す事に患者さんは成功しているのです。
質問をするときに、「大腸検査=苦しい」というような雑なメタ知識を前提にしますとコミュニケーションが崩壊してしまいます。また、自分の希望やゴールを細かく設定しすぎていてもだめです。何か情報を引き出したい時には曖昧さも重要な要素ではないかと思います。
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