2013/04/30

ピロリ菌除菌の時に気をつけていること色々

以下羅列(思い出した順に書いています)

1)副作用対策:
下痢対策:レベニンSとかビオフェルミンRとか。除菌後にビオスリーとか。ヤクルトとか。
口内違和感対策:もともと歯周病がひどい人要注意とか、シェーグレンなど唾液が少ない人要注意とか。対策としてはデンタルフロスなど口腔内ケア一般、場合によってはビタミンB2、B6とか。
出血性腸炎:エコーでは腸管が非常に腫れていて、菌交代というよりもアレルギーである印象。レベニンSなどは予防になるかどうかはわからない。頻度は0.1%程度。入院しなくて済んだ症例では、ステロイドあるいは抗ヒスタミン薬+整腸剤で対処した。
蕁麻疹:1%。5日~7日めに出現。ひどい場合はステロイドで対策。軽い場合は抗ヒスタミン剤で対応。除菌成功例が多いのがせめてもの救い。
菌交代:日和見感染など、抵抗力の弱い人は気をつけた方が良いかもしれない。(New)
2)禁煙
絶対必要と考えている。除菌中だけでも禁煙した方が成功率が高い気がする。(データなし)
3)飲酒
フラジールでは禁酒。他はどうなんだろうか。
4)LG21
除菌後も延々と飲み続ける人、食べ続ける人がいるから注意。除菌前と除菌中には試しているが、前向き試験ではないので、効果についてはデータなし。
5)除菌後の肥満
対策は必要
6)除菌後の高鉄血症
肝炎が悪化することあり、注意している。
7)コンプライアンス
薬の飲み方がやや難しいし、実際間違って飲む人がいるのでパッケージになっているランサップは助かるが、homoEM、heteroEM群はどうするんだ、という話。各社パッケージにするする言う割には未だ出てこない。
8)腎機能・肝機能
クレアチニンが高い症例ではどうするんだ、という症例の蓄積がまだ不足。
9)年齢
高齢者での除菌のメリットと、副作用が生じた時のデメリットについての前向き試験はまだない。個別の対応は本当に難しい。
10)ペニシリンアレルギー
がある場合の除菌を保険がカバーしないのはどう考えてもおかしい。三次除菌をカバーしていないのもおかしい。
11)除菌が終わってもフォローが必要であることを理解していても来院しない患者さんは未だ多い。当院が予約しづらかったり遠かったり混んでいたり、という問題はあるだろう。
12)再感染は1000人に1人程度は毎年いるようだ。除菌したら終わり、というわけではない。
13)他院でピロリ菌陰性とされていても本当は陽性、という場合はあるから、油断しないこと。

2013/04/27

良い情報を引き出すには曖昧さが重要かと

我々は患者さんが知り得ない情報にアクセスしやすい立場にあるのは事実です。したがって患者さんは自由に我々に質問していただいて構いません。しかし、



患者さんから日頃質問を受けるときに思います。

検索エンジンに入力するかのように、自分の希望する医療を指定して、「名医を教えて下さい」という質問が多いのですが、それは検索エンジン+私の主観以上の情報はありませんからつまらないです。



「大腸検査って苦しいんでしょ、それは嫌だから無痛で出来る先生を探して下さい」という質問をする方がおられますが、
「無痛x大腸内視鏡x場所」で調べれば良く、患者さんが自分で検索する以上の情報は私は持ち合わせていません。



ところが、「大腸検査って苦しいんですか?」という質問ならば違います。
「どうでしょう、人によるんじゃないでしょうか」と答えるでしょう。
「人による、とは患者?医者?」
「どちらも、ですね。でも基本的には一定レベルの医師にかかればほとんどの方が苦痛のない検査を受けられたはずです。『大腸検査は苦しい』の意味するところは一定レベルの医師にかかっていないか、患者側の問題で非常に困難な検査であったか、あるいは両方か、という場合があるということです」
「では私はどうでしょう」
「あなたはわかりませんが、55歳以下の方では患者側が原因で苦労すると言う事はよほどの事がないとない。したがって年齢やあなたの既往歴から考えると一定レベルの医師にかかれば問題なかろうと思います」
「先生の考える一定レベルってなんですか?」
「それは・・・」

というのが質問上手な方との会話です。ここで一定レベル、という言葉を2回用いていますが、一定レベル=平均レベルではない、という事には注意が必要かと思います。ここから一定レベルの意味や、そうした医師を探し出すための方法を引き出す事に患者さんは成功しているのです。

質問をするときに、「大腸検査=苦しい」というような雑なメタ知識を前提にしますとコミュニケーションが崩壊してしまいます。また、自分の希望やゴールを細かく設定しすぎていてもだめです。何か情報を引き出したい時には曖昧さも重要な要素ではないかと思います。

2013/04/18

不安をもつ人々

高いリスクと高いリスクとを比較してその狭間で悩む、というのが私の理解できる「不安感」です。

例を挙げると、解離性大動脈りゅう(手術しないと時期はわからないが命に関わる)があり、そして手術の成功率が70%(慢性期の手術で、高齢などいろいろなリスクが積み重なってそういう説明になったことがありました)と言われた、というような場合です。これはどちらにせよリスクが高いわけで、それはそれは不安だと思います。



ところがコレステロールが高いことに対してHMG-CoA還元酵素阻害薬を勧められたが、薬で副作用が出たらどうしよう、みたいなことで不安になっている人がおられます。
薬を飲んで年間2000人に1人の心血管イベントを予防できる、というような話です。飲んだって飲まなくたって、1999人にはあまり関係のないような。薬の副作用も同じような確率でしょう、あるいはもっともっと低い。飲まないことのリスクは軽微だし、飲むことのリスクも軽微。これで悩んで不安になってしまう、という例が外来では多い。ローリスクローリターンの事例で悩むのは時間がもったいないと思います。

不安になってしまう人は、おそらく危険の見積もりが正しく出来ていないと思います。危険に関してなのですが、年間で1%以上イベントが生じるだろうと見積もられる場合にはある程度危険はある、と自分は考えております。0.1%くらいで微妙。それ以下だとコスト的には見合わないことが多い。そうした危険性を患者個々に加減して判断することを内科医は自然にやっているわけです。

我々が「心配しないで良い」というのはそういう背景があることを知っていただきたい。アクチュアリーほど頭が良くないので、それをなかなか言葉や数字にして説明できない事をご了承いただきたいと思います。