2011/07/11

拡大内視鏡と内視鏡診断学

昭和大学藤が丘病院に高橋寛先生が教授として赴任されてから、すべての上部内視鏡検査にオリンパス社製のGIF-H260Zという内視鏡を使用するようになりました。

藤田力也先生と高橋寛先生が癌研有明病院時代に編纂された本があります。


癌研有明病院には、紹介患者を治療するだけでない、「自前で癌を発見する病院」という他の癌専門病院にはない特殊性があります。このために組織検査の修飾を受けていない癌本来の姿を見る機会に恵まれています。私が早期癌の発見に自信を持っているのはそのためです。(それでもtub2は難しい)

5mm以下の小さな癌は特に組織検査によって形態が大きく変化してしまいます。癌本来の姿がわからない。これが微小癌の診断学が遅れている原因と言えます。この本は、癌研有明病院で発見された癌をさかのぼって「最初の姿」を勉強することが出来る貴重なデータベースと言えるのです。私が発見した症例も含まれています。

それをさらに発展させ、「胃癌最初の姿を拡大内視鏡で記録する」というのが、昭和大学藤が丘病院に課せられたテーマです。



例えば当院ですと、このような2、3mmの病変を見つけた場合迷います。
①これを最初から拡大内視鏡のためにもう一度検査しなおすべきか。
②組織検査をして癌と診断すべきか。

私の正診率はこういう小さな病変では当然100%ではありません。
正常の可能性があるのに患者さんを拡大内視鏡の出来る病院へ紹介する負担を考えるとなかなか全例紹介できるものではないのです。

ところが昭和大学藤が丘病院では、全例で拡大内視鏡であるGIF-H260Zを使用していますから瞬時にズームをして拡大画像を得ることが出来ます。その結果、組織検査をせずとも癌とわかってしまう事すらあるのです。

拡大内視鏡を全例で使用することは、従来の内視鏡診断学をさらに発展させる可能性があります。
将来、症例が蓄積されたときに「これが決定版だ」というアトラスが出版される事を願っていますし、自分もその仕事の一端を担いたいと思っています。