2009/08/21

病変とその背景

これはたぶん副甲状腺だと思うのですが、通常甲状腺と同じエコーの吸収量なので大きくなっても認識できないことが多く、これはたまたま見えたのではないかと思います。症状はありませんでしたが、高感度PTHは上昇していました。CEAなどは調べていません。


内視鏡を教えるときに、貧血には本当に気をつけなさいと言います。
そもそも癌の色調変化は血球の色に由来する場合が多いのです。
老人、あるいは女性では貧血があってそのコントラストの変化が少ないことが非常に多い。
偶然目の中に変化が飛び込んでくるなどという幸運を待つのではなくて、背景粘膜に貧血があったらあらゆるテクニックを駆使して病変検索をしないと容易に見落としてしまうのです。

脂肪肝が背景にある場合、血管腫を見逃すならばまだしも、やや高輝度の早期癌が見えないこともあります。背景がコントラストをつけてくれる場合は良いのですが、逆にコントラストが低下する場合もあって注意が必要なのです。

大腸ではメラノーシスがあるとコントラストは上昇してポリープが見えやすくなります。ただし、メラノーシスというのはアントラキノンという色素による粘膜の着色で、それは下剤でして、それを連用している患者さんは必ずしも大腸検査がしやすいわけではありません。したがって喜んではいられないのです。

色々な病変を見つけるためにはその背景の理解が必要だということです。人間の目というのは相対的にしかものの判断が出来ませんから。

この話は、医学だけでなくあらゆる事象に適用される、社会に共通する法則のようにも思います。

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