2018/05/20

生存バイアスに目をつけろ

生存バイアス(Survivorship bias)という言葉があります。成功例のみ評価することであり、間違った結論に至る事があります。選択バイアスという論理的な誤りの一つです。

例を示します。世界大戦中、統計家のアブラハムワルドは、敵の攻撃に対する爆撃機の損失を最小限に抑える方法を検討する際に、生存バイアスを考慮した最初の研究者です。
Wikipediaより引用
当初海軍解析部の研究者らは、任務から帰還した航空機に与えられたダメージについて研究し、最も被害の大きかった領域を強化する事を推奨しました。
しかしアブラハムワルドは、彼らが被弾しながらもなんとか帰還した航空機のみを考慮し、実は撃墜された爆撃機はその評価のために存在しないことに気づきました。そこで逆の発想をしたのです。
帰還機の穴は、爆撃機がダメージを受けても安全に帰還できるエリアを表している、と考えたのです。逆に無傷の領域、ここを攻撃されると飛行機を失う原因となると考え、その部分を強化するよう提案しました。彼の研究は、当時の軍事研究の発達において画期的だとされています。

医者が「だいじょうぶですよー」とまず言うのは、人々が病院に来られた事実は致命的な部分に被弾していないことを意味するからです。逆に、いくら元気そうに見えていても、太っているとか、タバコを吸っているとか、アルコールを飲みすぎているとか、全く運動をしていない、などの場合には突然命を落とす事も知っているから、生命維持機能を強化しようと指導するのです。

胃が心配だと胃の検査ばかり受ける人がいますが、これは間違った考え方です。同じ部分を強化しても意味は少なく、全く無防備な部分を強化するのが正しい。

患者に「私の見立てが間違ったと思ったらフィードバックを下さい」とお願いするのも自分自身が成功バイアスの罠にはまらないためです。治った例ばかり集めたらだれだって名医です。ネガティブなフィードバックを集めてもなお、自分はどちらかというと良い医者かもしれない、という暫定的な結論を得るのには時間がかかります。他院で良くならないから来た、という人が非常に多いので、自分もきっと誤診しまくりだろうと、疑心暗鬼であることはずっと変わりありません。

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