2012/08/12

医療のレプリケーション

医療サービスを堅牢なものにするために、今のままではいけないという議論がありますが、それを阻害するのはユーザーである患者自身が医療のレプリケーションを望まないという事実ではないかと感じています。

http://blogs.msdn.com/b/windowsazurej/archive/2012/08/06/fault-tolerance-in-windows-azure-sql-database.aspx

昨今、ファーストサーバ株式会社が自社サービスを人為的なミスの見過ごしによりすべて消去して話題になりましたが、こういう大事故を防ぐためにはどうすべきかをMicrosoft社が示したのが上の文章で、これは他のあらゆるビジネスにも当てはまる印象を持ちます。

医療に当てはめることも出来ると考えられます。医療のフォールトレランス(fault tolerance: 障害が起きても医療を持続できる能力)は大切ですが実現するためにはたくさんの問題点があるのでしょう。Microsoftが選び出した最も重要な2点は以下のとおりです。

1)ハードウェア障害とソフトウェア障害は避けられない
2)運用スタッフがミスをすることが障害につながる

「運用スタッフが」と限定している部分は重要であり、これは「医者が」「ナースが」といった個々のミスとは違うことを意識する必要があります。医療のフォールトレランスは運用スタッフのスキルに依存する、という事は我々も良く経験するところであります。

Microsoft社の構築しているような大規模なクラウドシステムになりますと、ハードウェア障害やソフトウェア障害の起きる頻度も毎週、というレベルになるそうです。そこでハードウェアの冗長性を確保するためには個々のハードディスクをRAID化したり電源を二重化するといった各コンポーネントの冗長化に資金を投じるよりもコンピューターを複数台用意するほうが良いと結論づけています。

さらに彼らはサーバーそのものを堅牢化して耐障害性を極限まで高めるよりも「データベースをまず保護する」事を最優先の事項と決定しています。そのために基盤となるテクノロジーが、

1)データベースレプリケーション
2)障害検出とフェイルオーバー

であり、これらがデータベースを自動的に障害から回復させて被害を軽減し、入力されたデータが失われることを防いでいます。
まずデータベースは完全に別個のハードウェアにコピーを格納します。データはふたつのハードウェアに同時に書き込まれ、検証されますがそれが不一致であった場合には、さらに新しいハードウェアにすぐさまコピーが作られ仕事が続行されます。
詳しいテクノロジについてはリンク先に書いてあるため省きます。



医療においては患者はフォールトレランスを要求します。しかし、「この医者がいい」とか「この病院がいい」と言った感情は、矛盾すると思います。それは上述したように、冗長性を保って耐障害性を保つにしても、ハードウェア、ソフトウェア障害は避けようが無い問題で、つまり明日私が死ぬとか、私の脳が働かないという可能性は常にあるので、医者を指定したり病院を指定することは、冗長性を否定することと等しいからです。

医療の標準化と、医療のブランド化は相反する問題です。みなさんはどちらを優先して欲しいのでしょうか。Microsoftはなるべくすべてを自動化するアプローチをしています。医療においても同様に自動化出来る部分は自動化すべきと私は考えています。

当院自身、院長の名声に頼ることによって、宣伝費用などのコストが圧倒的に省かれています。ブランド化の恩恵を受けているために、利益の出ないことをしていても食べてはいけるという矛盾をはらんでいます。それではいけないという認識のもとに、様々な取り組みをしており、時々患者さんは面食らうかも知れませんが、どうぞご理解ください。







2012/08/01

視力5.0の世界とは

from Wikipedia.org
視力は視角を分であらわしたものの逆数である。
5mの距離からランドルト環の1.45mmの切れ目を認識できる場合、

1 / ( tan ( 1.45mm / 5000mm ) x 3600 ) = 0.957

と計算できるので視力は1であるのだそうです。

アップルの新しいMacBook ProのRetinaディスプレイは、220ppiです。
つまり1ピクセルが約0.12mmです。
それを40cmの距離から見たときには、

1 / ( tan ( 0.12mm / 400mm ) x 3600 ) = 0.926

すなわち、視力が0.9以下の人はRetinaディスプレイの1ピクセルが40cmの距離で認識できないのですから、誇大広告でないことがわかりました。私にとってはRetinaディスプレイじゃないけれど。



ところで、

「視力5.0の部族」などという紹介をTVで見たことがありませんか?あれってあり得るのでしょうか。

1 / ( tan ( 0.28 / 5000 ) x 3600 ) = 4.96

ですので、5mの距離から1.4mmの大きさのランドルト環の0.28mmの切れ目を認識できるという事になります。

眼球の直径は24mmですので、網膜上で

0.28 / 5000 x 24 = 0.00134

1.3ミクロンの解像度があるということです。

網膜の面積は900mm2ぐらいあるとして、その中に1億の細胞があるそうですから、

1 / sqrt(100 000 000 / 900) = 0.003
細胞の距離は、正方形が満たされていると考えたいい加減な計算で3ミクロン
ハニカム構造ですと、3.04ミクロンですからそんなものでしょう。
(実際視細胞は2-3ミクロンの大きさとされています)



つまりここからわかるのは、

視力5.0あるということは、物理的な解像度を超えている……ん?どこかで聞いたことがあるような……

あり得るのでしょうか。


網膜上の細胞間のだいたいの距離3ミクロンから逆算すると、

(0.003 / 24) * 5000 = 0.625

1 / (tan(0.625 / 5000) * 3600) = 2.22

となります。理論上の最高の視力は大体2ぐらい、という事なのでしょう。



ではなぜ、オースマンサンコンさんは視力が6だと言うのでしょうか。

2km離れたところからライオンの数を数えられると視力が6なのでしょうか?計算してみましょう。

1 / (tan( 2m / 2000m) x 3600) = 0.28

あれ?視力が0.28あれば2km先のライオンは認識できてしまう……少なくとも慣れればわかるはず。

2km離れたところのライオンを認識するのは視力は関係なさそうではあります。



でも視力が6.0というのはあり得るようです。 かつて日本テレビで本当に視力6.0ある事を証明した番組があったようです。(デッドリンクになっているので消しました)


物理的な解像度を超えて認識できる……脳内補完……はっ!


最初、この文章を書き始めたときには細胞の大きさから逆算して視力5.0はあり得ないだろうという論理を展開して終了する予定でした。しかし、実際に認識できる人がいる以上考えをあらためざるを得ませんでした。スーパーCCDハニカムは補完することにより解像度を超える認識が出来ますが、人間の目も黄斑部は3種類の錐体細胞、杆体細胞が複雑に配置され、より細かな画像をも認識できるのではないか、と考えをあらためました。

例えばオリンパスの顕微鏡では光スイング方式(DiRactorTM)という方法で、水平/垂直方向のCCD傾斜角を微小に振ることによって4度撮像、解像度を約4倍にアップさせる手法を採用しています。(特許は米国 Pixera Corporation(President&CEO:井手 祐二)が所有)

これ以外には、動きから画像を補完(フレーム間処理)し、解像度を上げる技術があります。
人間の脳がこれらの機能を持っているだなんて、想像するだけでわくわくしませんか?