2018/01/18

体重と体調


正月明け、患者さんに体重を聞くと増加している事が多く、しばらく前の報告を思い出しました。一方、胸焼け症状を訴える人に体重の増減を必ず聞きますが、この質問に関してクリアに答える人は極めてまれ、と言いますか出会ったことはありません。

ある日、微妙な体重の違いによって人の身体の調子は変わることがある、との私の説明に非常に敏感に「そうですよねえ」と反応してくれた人がいました。何を見せながら説明したかというと、医療ビッグデータ界にちょっとしたセンセーションと、やられた感を醸し出したWithingsの体重計を利用したNEJMでの報告です。

Correspondence: Weight Gain over the Holidays in Three Countries
N Engl J Med 2016; 375:1200-1202September 22, 2016
DOI: 10.1056/NEJMc1602012

患者さんには以下の説明をしました。

  1. 休日には平均体重が増加する。日本では増加の程度は最大0.4%とわずかだが、サンプル数が多いので統計学的に有意差が出、意味のあるデータです。これがビッグデータのパワー。
  2. クリスマスは祝うが正月は2日から仕事をするアメリカと、正月を中心に祝う日本ではピークが5日ぐらいずれているでしょう?さらに日本はお盆、3月末のお花見の頃、そしてゴールデンウィーク、休みになると体重が増加しているのがわかります。
  3. 経験的に逆流性食道炎の増悪は、こういう時期のあとによく見られ、その差が僅かな事も私にとっては非常に納得が出来ました。500g以下の体重変化が逆流性食道炎では重要です。逆流性食道炎患者は休み後に増える傾向があると思っているけれど、その原因の一つかもしれません。

わずかな体重の変化でも身体の調子に起きる可能性がある事を説明した時に、素直に納得してくれない人が実際は多いわけですが、そういう大雑把さは当然患者の主訴にバイアスを与えるため、その患者は自分の症状を見落としているという前提で思考していきます。逆にわずかな体重変化を一喜一憂している人は俯瞰が出来ていない可能性が高いため、やはりその前提で患者の自覚症状の一部をあえて切り捨てて考えます。
それを仕事のパフォーマンスや感性に結びつけて考えられる方は稀です。さきほど私の説明にすぐ納得してくれたのは職人さん、若いけれどさぞ腕が良いのだろうな、と思いました。

2017/12/23

スタチンが大腸がんの再発を抑制するのはなぜか?

Associations of Statin Use With Colorectal Cancer Recurrence and Mortality in a Danish Cohort
Timothy L. Lash; Anders H. Riis; Eva B. Ostenfeld; Rune Erichsen; Mogens Vyberg; Thomas P. Ahern; Ole Thorlacius-Ussing
Am J Epidemiol. 2017;186(6):679-687. 

コレステロールを下げる薬のうちスタチン類(HMG-CoA還元酵素阻害剤)は日本で開発されて最も使われている薬ですが、この薬はコレステロールを下げる結果、抗炎症作用を発揮するのでいろいろな副次的な効果が報告されています。大腸がんの再発や死亡率を下げるというメタ解析の論文もその一つです。

私のブログで「黄色腫」について書きましたけれど、白血球はコレステロールリッチですからコレステロールを下げることは白血球の活動をやや抑制する方向に働くと理解しておきますと、この論文の主張も、インフルエンザでのサイトカインストームにも抑制的に働いてスタチンを飲んでいる患者では死亡率が低いなどの理由も、血管内での炎症が強いメタボリック症候群の人の心筋梗塞の一次予防に一定の効果がありそうな事も説明できるというわけです。

非常に簡単に書きましたし、嘘かもしれませんがこう考えておけばいろいろなことが一元的に理解できます。