2018/07/07

便潜血検査をシミュレーション

便潜血検査が検診で陽性になった人が、とある医療機関に行き、もう一度便潜血検査をして大丈夫だったから大腸内視鏡検査を受けなかった、というような話がありますが、それは間違っていますという事を説明したくてこの文章を書いています。

大腸がん検診の感度と特異度は両方95%ぐらいとされていますが、統計の照合方法、特に偽陰性はがん登録によるものなので、受けている人は何年も連続で受けているのが前提になっていると考えられ、それが精度を上げていると考えるのが素直です。すなわち、内視鏡医としての感覚で大雑把に各病変の出血率を書いてみると以下の図のような雰囲気になります。進行がんからの出血率は40%ぐらいとしておくと、2回法で64%がひっかかり、3回連続してすり抜ける人は5%程度になりますので、こんなものじゃないか、と思います。


さて、便潜血検査2回法で陽性になったとき、特にまだ検査をしたことがない人の場合、その人が異常がないのか、進行癌なのかはわかりません。
それなのに、検査を受けたくないという患者の意思を尊重してかわかりませんが、もう1-2回便潜血検査をしてみて異常がなかったら検査をしなくてもいいよ、と説明してしまうと、かなり大きなポリープの人でもすり抜けてしまうから危険だよ、というのが私の主張です。

上記の数字はデタラメで自分の感覚的なものだけれども、便潜血検査を受けるなら毎年ちゃんと受けなくちゃ意味がない、一度でも引っかかったらちゃんと検査を受けて欲しいということがわかっていただけると嬉しく思います。

などと、もう大腸内視鏡検査をする気のない自分が主張するのはおかしいんだけども。

2018/06/02

アミラーゼが高いときの説明

アミラーゼが高かったと心配している人がいる。
無駄な心配なので、思考法についてメモする。

健康診断で測定しているアミラーゼは、膵臓、ないしは、唾液腺から分泌されている酵素を血液中に検出したものである。
食事をした時には唾液がよく分泌されるし、膵臓からも膵液が分泌されるので、食後にアミラーゼを測定すると高くなる。
食前であってもチューインガムなどを噛んだあとには高くなる。
もちろん炎症で唾液腺や膵臓に障害が起きたときは高くなる。
アミラーゼは代謝されないで腎臓から尿に排泄されるので、腎臓からの排泄が悪くなるような条件が整った時にはアミラーゼは上昇する。濾過量が少ないときのほか、アミラーゼどうしが結合して二量体、四量体と分子が大きくなると排泄されにくいので血液中のアミラーゼは上昇する。

アミラーゼが高い時にはしたがって、
・炎症などで破壊されたとき
・食後や咀嚼など上昇する因子がある
・腎臓からの排泄が低下する
という状況を考える。

アルコールを飲んでいる人には飲まないようにしてもらい、
水分はたくさん飲んでGFRが低下しないように配慮した上で、
絶食にて採血をすることはその3つを鑑別するかもしれない。
唾液腺型アミラーゼと膵型アミラーゼを測定するのも良いであろう。
尿中アミラーゼも役に立つであろう。(クレアチニンとともに測定)
破壊を見るには超音波で膵臓、唾液腺をみたり、トリプシンなど別の酵素の測定も役に立つかもしれない。いずれにせよ相対的評価の連続となるので、高度な判断が出来る医師の元で行うことが大切である。いたずらにトリプシン測定しましょう、みたいな医療はNGである。

通常、アミラーゼが高い、と心配する人々は、背景に「飲み過ぎ」とか「膵臓がんの知り合いがいる」などなにか引っかかる事がある人々である。
だから、こういうアルゴリズムなどはどうでも良くて患者の背景を聞き出して、そこに潜む問題を解決することを自分は優先している。むろんIgG4をいきなり調べる場合もある。