2011/04/07

「お腹が弱い」とは何か

患者さんがよく使う、そして定義が曖昧なフレーズの代表格といえば、
「私は胃が弱い」と「私はお腹が弱い」である。

「胃が弱いってどういう事?」って聞くと様々である。

「何かと言うと痛くなる」
「油モノが食べられない」
「たくさん食べられない」
「もたれやすい」

すべて別の人の訴えである。共存する場合もあるし、しない場合もある。

ところが最初のふたつはピロリ菌がいない人に多い症状で、
「おいおい、あんたの胃は強いじゃないか」(胃癌になりにくいんだゾ)
とツッコミを入れたくなる気持ちをぐっと抑える。
そして困る症状はこうすると取れるのだよ、とアドバイスをするのです。
(内視鏡をすると胃酸の基礎分泌だとか、機能的な異常が良くわかるのでそれにあわせる)

しかし、「胃が弱い」を十把一絡げにしてしまい、医者によっては全くデタラメ(私から見たデタラメであり、彼らにすれば正当なのだろう)な指導をするから混乱する。
例えば「消化の良いものを食べなさい」とか、この薬を飲みなさいと潰瘍の薬を渡す、などである。
(消化の良いものを食べてますます事態が悪化する場合もあるので困るのです)

「お腹が弱いってどういう事?」と聞くと、

半分以上は
「便がゆるくなる」
と答えるのだけれど、
その半分はアルコールやタバコの飲み過ぎ・吸い過ぎである。
原因のある下痢について、「弱い」と表現することを、私はあまり認めたくはない。

あとは
「お腹が痛くなりやすい」
が多いかもしれない。

「太れない」
という事を言う人もいる。




「弱い」という表現を定義したり理解するのは難しい。

私にとっては、
質問に対する、こうした患者さんの答え方はすべて
患者さんをプロファイリングするための大切なデータです。
「弱い」という言葉を使う人々はこんな人!
というのがなんとなく私の中にあって、
それに合わせた診断方法とか、説明などをします。

人々は、不安を、漠然とした言葉・イメージで抱えていることが多く、
「弱い」という言葉は抽象的ではあるものの、不安をあらわす非常に医学では大切な言葉です。
例えば喫煙者がお腹が弱い、と表現するときには「タバコに対する漠然としたネガティブな感情」を背景として、症状に対する不安があるのでしょうから、「タバコがだめだ」と言うのは簡単ですがそこはぐっとこらえて、不安を取り去るべく診断なり説明なりを進めていく必要があります。

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