2008/04/30

CONQUESTをサーバーに、K-PACSをマルチクライアントにする。

DICOMサーバーとして、CONQUESTは必要十分な機能を備えているらしい。
という噂を聞いてWindowsXPにインストールをしてみました。

CONQUEST は UC Davis、Mark Oskin 先生の USDMC DICOM code を元に、オランダがんセンターの Lambert Zijp 先生と Marcel van Herk 先生が開発したソフトウェアです。

CONQUESTは、データベースエンジンとして、MDBファイルを選択することも出来、実際に良く動きます。
あとでMySQLとか、SQLiteにお願いすることも出来ますので、10万枚以下を管理するならば、MDBファイルを選択しても良いかもしれません。

Windows XP にまずはインストールしてみました。

Conquest DICOM software のページから
Download dicomserver1413.zip (5685 KB, Complete DICOM server + documentation + sample data)
を選んでダウンロードします。

解凍すると、フォルダの中身がそのままプログラムになります。

そのフォルダの中のdgate.exeが本体で、ConquestDICOMServer.exeが設定ソフト。
設定は、dicom.sqlとか、acrnema.mapとか、dicom.iniで行っているようです。
最初にインストールされたときにはdicom.iniはなく、また、データベースエンジンを変えたいときには出来ているdicom.iniを消してしまえば最初からやり直すことが出来ます。

acrnema.mapの設定だけは大切です。これをきちんとやらないと、各モダリティや、クライアントとして使用する予定のK-PACSと通信が出来ないのです。

2008/04/29

PETと、GERD、FD、IBS

PET(ポジトロンエミッションCT): 陽電子線を出す放射性同位元素をつけた様々な物質(18F-fluorodeoxy glucose(FDG)を使う事が多い)を注射して、臓器への取り込みを見る検査。もともとは脳の働きなどを見る有力な方法として開発され、現在は癌検診などに使われる事が多い。

毎週、癌研有明病院に行っていますが、そこにはPETの機械があり、癌検診も行っています。胃や大腸などの消化管に集積を認めることが良くありますが、それらは「生理的な集積」と表現され極めて実態は曖昧です。果たして「生理的」という言葉は正しいのでしょうか。

FDGが消化管に集積する理由として、次の二つが考えられます。
  1. 炎症がある場合。
    • 炎症の強い部分はブドウ糖を良く消費するためFDGが集積する。
  2. 蠕動運動による集積。
    • 蠕動運動=筋肉の収縮であるため、やはりブドウ糖を良く消費する事による。

例えば胃の場合、ピロリ菌による炎症が強い場合や、蠕動運動が強い場合とがそれに当たるでしょう。大腸の場合、蠕動運動が強い部分に集積すると理解出来ます。

実はこのPETで集積するパターンをよくよく読むとが患者さんの訴える症状と実に一致している事が多いのです。
つまり、GERDの患者さんは食道下部への集積、FDの一部では胃に集積、IBSでは大腸の特定の部位に集積が起きやすいような実感があるのです。

蠕動が強い部分にFDGが集積する事を見出したのは癌研の看護師さんで、チューインガムを噛んでPETを受けるとあごに集積するのだから、胃に集積するのは蠕動のせいだろうと考えていたそうです。

GERDのように胸やけを呈する患者さんでは食道の蠕動運動が極端に亢進している一群がいるので、こうした疾患の人では集積すると思われます。つまり、GERDの病因を探る上でも極めて有用なのです。

逆にPETの精度を上げたければ事前にブスコパンなどで腸管運動を抑制しておくという方法も考えられます。そうすれば、今まで見つけにくいと言われていた大腸癌や胃癌も見つけやすくなるはずです。

そうした概念を頭に入れて、PETの写真を読むと極めて多様な解釈が出来、実に興味深い検査です。

ある学会発表で、PETでは胃の上部に生理的な集積が多いが、その理由が不明であるという発表があったけれども胃の蠕動運動のペースメーカーは胃体上部にあるので、全く当然の事のように思われます。






それとは関係ないけれど、MRCPを撮った時に、膵胆管以外の部分を読むのもまた一興です。

どんな検査でも、見えないと言われている部分に面白い情報が隠れている事があります。

その一つは消化管のエコーです。

2008/04/25

除菌の成功率を考える

ヘリコバクター・ピロリの除菌療法に影響を来す因子として重要なのは「胃の中性化」であるけれど、pHモニタリングをしながら除菌治療をした論文はあまり見た事がない。

The effect of Helicobacter pylori eradication on intragastric pH during dosing with lansoprazole or ranitidine. Alimentary Pharmacology & Therapeutics. 13(6):731-740, June 1999.

これはPPIとH2RAを比較していて、PPIの方が優秀だと結論づけている。

CYP2C19 genotype status and intragastric pH during dosing with lansoprazole or rabeprazole Alimentary Pharmacology & Therapeutics 14(10):1259-1266, October 2000.

ランソプラゾールとラベプラゾールを比較して、ランソプラゾールは肝臓内の酵素(チトクロームP450)のひとつであるCYP2C19の遺伝子形によって代謝が左右される事が述べられている。PM(poor metabolizers)遺伝子を持つ人々は非常にランソプラゾールが効き易く、そうでない人よりも胃内pHが高くなるという論文だ。

ランソプラゾールはCYP2C19以外にもCYP3A4という酵素の代謝(恐らくそれ以外も)も受けるため、これらの遺伝子形によって効果が異なる事が予測される。

これを事前に予測できないかという話だ。

CYP2C19で代謝される薬剤にはランソプラゾールだけでなく、ジアゼパムも含まれる。

ジアゼパムといえば当院で内視鏡時に使用する鎮静剤である。このジアゼパムという薬にも効き易い人、効きにくい人がいる。そして薬が効き易くなかなか目が覚めない人は、CYP2C19のPM遺伝子を持つのではなかろうか。そういう人については、除菌成功率が高いのではないか。そういう仮説を考えた。

逆にジアゼパムが全く効かない人達もいる。この人達はランソプラゾールもすぐに代謝してしまうため、胃内pHが上昇しにくく、除菌が失敗してしまう可能性があるのではあるまいか。

2008/04/24

消化器病のトレンド

昨年の消化器病10大ニュースから抜粋
Top 10 Gastroenterology News Stories of 2007

1)ACG(American College of Gastroenterology)が新しいピロリ菌除菌ガイドラインを提唱。
  • 日本で認められているクラリスロマイシン・アモキシシリン・PPI・1週間法よりも2週間法の方が除菌率が良いみたいです。しかしそもそも治療のデザインをするときに、CYPは考慮しないわ、体重は考慮しないわ、喫煙は考慮しないわという状態でやみくもに2週間投与してそれを良しとするのはどうなのか。もともと太っている彼らの場合、除菌がメタボを増やしている事には言及していない。
  • しかしこのガイドラインが発表される以前から日本では2週間法に関して無反応です。日本でも若年者で失敗が多いのに、無反応ってなんだろうか・・・。
2)急性膵炎治療の進歩
  • 従来から日本はCT診断、トリプシンなどによる追跡、タンパク分解酵素阻害剤、血漿交換など、コスト度外視で世界をリードしていた訳です。世界が日本に追いついた。ただし、すぐに内視鏡的にドレナージするなどの治療はあちらの方が進んでいます。
3)成人過敏性腸症候群(IBS)の新しいガイドライン
  • 結局、うつ病スペクトラムの中に入れられてしまうのか・・・?違うと思うんですが・・・。
4)PPI(逆流性食道炎治療薬)が骨粗鬆症を惹起する。
  • JAMAの論文は非常にインパクトがありました。3年の投与で大腿骨頸部骨折がかなり増える様です。胃切除後とまるで同様の栄養吸収になるわけだ。これはショックだった。日本での反響のなさが逆に不気味でしたが、それは萎縮のある人と結局同じだから・・・という意味でしょうか。
  • 幸い以前からPPIはオンデマンド療法でしたが、ますます維持療法をしなくなっています。
5)便秘の治療薬、Zelnormが心血管疾患を増大させるとして発売延期。
  • そもそも下剤は心筋梗塞のリスクを増大させるという側面があるが、便秘をそのままにしておくこともリスクを増大させる。便秘薬の治験はさぞ難しかろうと思う。
6)PPIはバレット癌を抑制出来る。
  • しかし、抑制出来たとしても全くコストベネフィットゼロ。バレット癌はかなり遺伝子とも関連があるらしいし、胃酸だけが原因でないのは明らか。むしろ膵液の逆流などどうなのだ??それはかなりtumorgenicだと思われるが。
7)全米トップ41病院発表。
  • 私も働いた事があるHarper-Hutzel Hospital (Detroit)が入っていて、とてもうれしい。ナイチンゲール誓詞がはじまった伝統ある病院です。私の叔父(Dr. Choichi Sugawa)も教授をしています。
8)AGA(American Gastroenterological Association)が、機能性ディスペプシアのガイドライン発表。
  • 「胃腸が蠕動亢進しても、胸焼けをしたりもたれたりすることがある」という事実を理解出来ない限り、永久にガイドラインは無意味だと思う。
9)逆流性食道炎のガイドライン発表。
  • 逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群の三つはこの数年飽きもせず治験が繰り返されている。
10)linaclotide acetateというcGMPを合成する酵素であるグアニル酸シクラーゼのアゴニストが、便秘型過敏性腸症候群に効くという。Phase2のくせにTop10入り。
  • 開発のMicrobia, Inc.は情報が少ないベンチャーだ。現在はIronwood Pharmaceuticalsと名前を変えているが、いわゆる"Drug Hunters"らしい。なぜ便秘薬が北米でこんなに注目されるのだろう。マーケットが大きいのだろうか。

逆流性食道炎、機能性胃症、過敏性腸症候群の3つはあいかわらずのトレンドらしい。
発展途上国にはないタイプの疾病概念で、うつ病スペクトラムの中に入れられつつあって、社会不安をそのままあらわすようなランキングと言えようか。

命に関わる病気で無いだけに、医療者や製薬メーカーの訴訟リスクも非常に低く、かつ儲かる宝の山だと考えられているに違いない。

2008/04/21

ピロリ菌除菌のその先

ピロリ菌関連のガイドラインが出版される度に「除菌後の未来」についての言及の有無に関して注目します。

ピロリ菌を除菌すると潰瘍の再発率は激減します。言うまでもなく画期的な治療法です。
癌については、除菌で発癌が激減するのか単に発癌を遅らせているだけなのか決着は付いておらず、過信は禁物です。萎縮がなくとも胃型胃癌は発生することがあり、小さな褪色を見逃さない「鵜の目」が必要です。こうした疑問は将来解決されるでしょう。

しかし今回も落胆した事があります。それは「除菌後の肥満」つまり「ピロリ菌除菌がかえってメタボリック症候群を作り出している恐れ」については全く注意が払われていないことです。

さて当院では内視鏡時に患者さんの体重をコンピューターに記録しているのですが、除菌治療が許可された2000年直後から、除菌の前後1年間で体重が増加している人がいるのに気付いていました。その条件はやや複雑で、禁煙に伴う体重増加と区別が付きにくく、全く体重が変化しない人もいて、解析は容易ではありません。前向き研究をデザインする事は私にはできそうにありません。

除菌と同時に禁煙をした人、あるいはアルコールを摂取している人、女性よりは男性、コンプライアンスが悪い人(まじめに病院に来ない人)が体重が増加しやすいのかもしれませんが確信はまだありません。たった数百例では解析しようがないからです。年齢は関係ないように思います。体重が増加しなくとも、血圧が上昇したり、コレステロールが上昇する場合もあります。

禁煙をした人は「明らかに以前よりも食べている」と告白します。しかし、それ以外の人については「食べている量は変わらない」と強く主張するのがその特徴と言えます。

ピロリ菌を除菌すると粘膜に炎症が生じて萎縮することによって落ちていた胃酸分泌能が回復します。するとカルシウムや鉄などの吸収は良くなりそうです。タンパク質も胃酸で処理されることによって吸収されやすくなるのでしょうか。あるいは、患者さんは実は食べている量が増えているのでしょうか。増加した胃酸を中和するために、より多くの食事を摂取しているのでしょうか。

除菌をしたのに、その後長期にわたりPPIを服用する事は栄養吸収についてのせっかくのメリットを相殺してはいないでしょうか。

こうした地道な事を調べるのは大変ですが、ポスト除菌時代を語るならば栄養の吸収についての研究も不可欠なように思います。

当院ではピロリ菌を除菌する場合、禁煙指導(除菌成功率が高くなると見込まれる為)はもちろん、体重増加に対して強く注意を払っています。除菌することで潰瘍の再発や発癌を抑制できればもちろんすばらしい事ですが、メタボリック症候群を誘発してしまえばそのメリットを帳消しにしてしまう可能性があるからです。

2008/04/18

胆石の出来やすい人

<胆石>
食事中の脂(あぶら)などの栄養素を消化する「胆汁」という消化液(必要のない血液などの分解産物も含まれます)は肝臓で作られ、それを一時蓄えておく臓器「胆嚢(たんのう)」にできる「石」の事を胆石と言います。

石という名前が付いていますが、珪素(けいそ)でできた本物の石ではなく、胆汁が結晶になったり、固まったりして出来た物です。石の中では堆積岩に近いかもしれません。

この胆石が出来る様子は、都会の川の流れをイメージすると理解がしやすいと思います。

都市部の川にはよくヘドロが堆積しますが、それは
1.川の流れが遅い(胆嚢の収縮が悪い事に相当)
2.水が汚い(胆汁が濃い事に相当)
という理由によります。

これを人間に当てはめてみると、胆石の出来やすい人の例を挙げることが出来るでしょう。
  • 食べる量が少ない、油が苦手、食事と食事の間隔が長い人。
    • 食事をしないと胆嚢が収縮せず胆汁が溜まりっぱなしになります。食事量が少なかったり油を食べなかったりしても同様です。すると胆嚢の中の胆汁が徐々に濃縮してしまい、やがて飽和状態となり、さらに放っておくと結晶となって堆積してきます。まるでヘドロが川の中に留まってしまうかの様です。ですから、やせていても胆石になる人は案外多いのです。
  • 胃切除後の人
    • 胃を切除するときにいっしょに胆嚢を収縮させる神経を切ったり、十二指腸を切ったりする事があります。すると胆嚢の収縮が悪くなってしまいます。すると食が細い人と同様に胆汁が濃縮し、胆石が出来やすくなるのです。胃切除のときにいっしょに胆嚢も切除することがあるのは、胆石を予防する意味があります。
  • 糖尿病の人を含め、自律神経障害の人
    • 糖尿病を発症して5年を過ぎると自律神経障害が出てきます。胆嚢を収縮させるのは自律神経ですのでこの収縮が悪くなることにより、胆石が出来やすくなります。
  • 脂っぽい食べ物が好きな人
    • 胆汁中には非常にコレステロールが豊富なのですが、脂っこい食べ物を食べるとさらに濃くなってしまって飽和状態となり、すぐに結晶が析出してきます。それが種になって石となってしまいます。良く西洋型の食事で胆石になりやすいなどと言われるのはこれによるのかもしれません。ただし純粋なコレステロール結石は少ないので、この説明だけでは私は納得できません。不規則な食事や胆嚢収縮不良など、複雑な要素がからむのだと思います。
  • 異常赤血球の人、溶血性貧血の人
    • 胆汁の中に赤血球の分解産物がたくさん出てきてしまい、それが結晶化してしまいます。
  • 抗生物質(ロセフィン)による偽胆石
これらは、胆嚢ポリープや、胆嚢腺筋症という病気にも当てはまるかもしれません。


<胆石の予防はどうするか>

おもしろい論文が昔Lancetという立派な雑誌に載りました。胆石の民間療法が実際に効くと言う話です。

簡単な胆石の治療法
  一週間、毎日リンゴを2個食べる
  最後の日に、オリーブオイルを240cc飲む

リンゴの中のリンゴ酸、これはコレステロールなどを良く溶かしてくれます。このリンゴ酸を摂取することで胆嚢内の結石の一部を溶かし、流れやすくしておくと言う意味でしょう。
オリーブオイルを飲むと胆嚢が収縮しますから、リンゴ酸でやわらかくなった胆石を一気に押し流すという事です。ちょっと荒療治ですが、ヨーロッパの民間療法だそうです。
これは胆石の生成とちょうど逆を行うと言う意味で示唆に富んだ論文だと思います。
自分でする勇気はありません。
ダイエット中にリンゴを食べると言うのは、理に適っているのだと思います。

以上より、胆石を予防するためには、
1)きちんと胆嚢を収縮させるようにある程度脂も摂る。
2)脂ぎとぎとじゃなくて、健康的な食事の内容で。
3)規則正しく食べる。
という事だと思います。



牛の胆石は大変高価な漢方薬で「牛黄(ごおう)」というそうです。
馬の胆石は馬宝(ばほう)、猿の胆石は猴棗(ばざる)、犬の胆石は狗宝(きょうほう)と呼ばれいずれも珍重されています。
もとは胆汁ですから、消化作用があると言うことまでは理解できますが、のどのつまり、喘息、認知症まで治すと聞くともはや常人の理解を超えています。

2008/04/16

NASH そして IRHIO

C型肝炎には瀉血療法がある。鉄欠乏にすることで、肝臓の炎症を鎮静化させるというアイディアは昔からあった。

NASHと鉄の関係も色々言われているが、日本での議論は釈然とせず、短絡的すぎるので、MEDLINEを検索してみた。

すると、insulin resistance-associated hepatic iron overload (IRHIO)という概念が見つかった。
NASHや脂肪肝患者では決まって血液中のフェリチンが高い。それすらインスリン抵抗性とそもそも関係があるという概念であり、これは病因に迫っていると納得できる。そ のあたりの機序は現在解明中のようであるが、日本ではあまり有名ではないので覚書として書いておくことにします。

ちなみに、透析患者さんに使用する鉄キレートがFDAで承認されましたが、これには肝障害の副作用があるようです。NASHや脂肪肝に対して、ピオグリタゾンを使用するとフェリチンが低下するのか、これはまだ確かめていません。また、瀉血療法も行っておりません。

さてもともとは、NASHの前に高血圧でこういう概念があったようだ。(Piperno A, et al. J Hypertens 2002;20:1513-8.)

鉄と動脈硬化に関しては、HIF-1という遺伝子が低酸素で誘導され鉄との関連が深いのだという。

また、鉄と反対の働きをするイオンとしては亜鉛があり、C型肝炎の患者さんやNASHの患者さんには亜鉛摂取を推奨し、実際有用であるようだ。

以上は、閉経後女性の脂肪肝発症、糖尿病発症と密接に関連している可能性もある。

このような理由で、個人的には貧血女性に対して鉄の補充療法を積極的には行っておらず、フェリチンが少々上昇したところで終了としています。

2008/04/14

ダイナミクスのデータ構造を理解する(2)

前回書き忘れましたが、マイクロソフトアクセスの長整数型のフィールドは4バイト使用し、-2,147,483,648 ~ 2,147,483,647 の範囲の数値が設定できます。
したがって、カルテ番号は21億4748万3647が上限です。

さて、「患者番号」の次に重要なのは「受診番号」です。これも長整数型です。
これは患者さんの受診の度に割り振られる番号です。21億までですから、一生使い切ることはありません。

「受診テーブル」を見ますと、患者番号、日付、それから受診番号がセットになって格納されます。

診療データに関しては、患者番号ではなくて、受診番号とリンクされます。患者番号はあとで変更される可能性がありますが、受診番号は永久に変更される可能性がないので、診療データを管理するには受診番号を使うのが便利なのです。

電子カルテでは常にデータを入れ換えたり参照したりという作業が繰り返されますが、「受診番号」はそれらの作業を、電子カルテ上でするために、無くてはならない、「肝」なのです。他社の電子カルテがどうなっているか知りませんが、このデータ構造が電子カルテのゴールデンルールであり、設計者である吉原先生が天才だと思った理由の一つです。
「患者番号&時間」等をキーにして受診番号にするデータベースがあるかもしれませんが、その設計では破綻します。

<今日まで勉強したテーブル>
 患者マスター
 患者保険マスター
 患者包括マスター
 受診

2008/04/12

ダイナミクスのデータ構造を理解する(1)

最初に見るべきが、患者マスター、患者保険マスター、患者包括マスターという3つのテーブルだ。
「テーブル」という言葉が??という人は、入門書を読むべきだ。

そしてその中で最も重要なデータは、「患者番号」である。

患者番号は長整数型と呼ばれるデータ型だ。つまりダイナミクスでは、患者のIDとして文字列は扱えない。A01などというカルテ番号はありえないわけだ。

例えば私の患者番号が100だったとする。ところが、101も私だし、102も私。
そういう扱いになっている。最後の一桁、それを「枝番」と言う。

100から109までが、ある特定の個人を指し示す患者番号だということだ。

5000番の人ならば、5000から5009までの番号を割り振って良いということになる。

別のカルテから移行する場合には、だから一桁番号が増えると理解すれば良い。

90001という番号の人をダイナミクスに移行する場合には、900010をダイナミクスでは割り振ると良い。

2008/04/04

ITを駆使するが、ITには決して依存しない医療

ダイナミクスは、レセコンとしても電子カルテとしてもはるかにライバルを凌駕しています。

レセコンについては、面倒な公費への対応が迅速であることや、計算の正確さなど、挙げれば枚挙に暇がありません。

電子カルテはどうでしょう。患者さんにとって最も重要な情報はなんでしょう。
それはテキスト形式のデータなのです。

私と電子カルテ、オーダリングシステムの関わりは案外古く、大学院の頃には大学の情報委員会の末席に居りましたし、学会でも情報委員会の幹事を拝命していました。そして以前から常々「災害時に使えない電子カルテは電子カルテとは呼べない」と主張し、全く無視されてきました。若造ですから無視されても良いのですが、失望するのに時間はかかりませんでした。災害時には、様々な医療のリソースが不足します。色々な医療器具などの在庫、あるいは人材を必要な場所に、必要な時間にデリバリーしなくてはいけません。こういうときこそ、ITが活用されるべきなのです。

災害時にITが活用できるためにはどうしたらいいでしょう。最低限のデータで医療を行うにはどうしたら良いのでしょう。答えが、テキスト形式のデータなのです。

たった一枚の写真を保存するのと、一生分の医療情報を文字で保存するのとでは、文字情報の方がはるかに少なくて済みます。したがって、むやみやたらと画像を保存したり、その他の情報を保存することは、文字情報を保存することに比べればどうでも良いことなのです。

さて、コンピューターで使う文字は現在いくつかのコード体系が知られていますけれども、このコード体系が戦争などで全く失われてしまうということは何千年先もないでしょう。したがって、テキストのデータさえ残っていれば、コンピューターが無くなってしまおうが、ソフトウェアが失われてしまおうが、必ず参照がが可能なのです。

ITに依存しないというのはそういう意味なのです。

現在、病院で使うような立派な電子カルテに納められているデータは、戦争や地震が起きてコンピューターやソフトウェアが破壊されたら復旧できるでしょうか?出来ません。

ところがダイナミクスはどうでしょう。ダイナミクスは、これ以上ないほど単純なテキスト形式ですべてのデータが保存されています。そのデータさえ持ち歩けば、あちこちのコンピューターで開くことがすぐに出来るのです。最近では携帯電話にデータが入るようになりました。

これこそが災害時にすら力を発揮する電子カルテの真骨頂です。

ダイナミクスを使用した診療スタイルは一見ITに依存しているように見えるかもしれません。

しかしその実態は、「ITを駆使するが、ITには決して依存しない医療」と言えるのです。

これが電子カルテとしてもダイナミクスが最高だと私が思う最大の理由です。

ダイナミクス導入まで

平成10年頃、2年間のデトロイトへの遊学を終えて帰って来た私は鵜川医院を手伝う様になりました。そこで、レセコン(医療費を計算するソフト)を操作するはめになりました。当初はリコーの機械で、これは小さなUNIXマシンでした。なかなか良く出来た設計で、技術者の人もコンパクトなデータベースはメンテしやすいと高評価でした。しかし、リコーは撤退。次に導入したのは富士通のレセコンでした。これはこれで、キーボードの代わりにタッチパネルを導入したので初心者の事務員にもわかりやすく、とても良かったです。しかしこの機械も突然サポート終了。

突然というのは営業の伝達ミスで、本当は1年前から決まっていたのだそうです。前々から電子カルテは導入したいと思っていましたので、これ幸いとダイナミクスの連絡先を調べました。

ダイナミクスは以前から松岡先生のホームページが有名でしたから存じ上げていました。そして、レセコンがブラックボックスでは医療のレベルが下がると思っていた私は共感を持っていました。当時はソフテックのサポートも無く、買い方すらわからない状態。でもいつのまにか全国で最大(非公式)のシェアを持つまでに成長しておりました。

実はダイナミクス以外は考えていませんでした。データがオープンかどうかという時点でほとんどのレセコン、電子カルテは脱落しました。ORCAは悪くないとは思いましたが、COBOLを使っている(若いプログラマーがあんまり居ない。銀行の基幹系の遺産?当時ORCAの開発はどこか別のCOBOLでやっていたものの、リリースする時点になってオープンソースのCOBOLに急遽変更するなどのゴタゴタもあった)、プログラムのソースが私向きではなかった(オープンソースのプログラムなのですが、そのソースのコメントがちゃんとしていないから良くわからなかった)、使っている先生方にあんまりプログラミングが得意な先生が(当時は)居なかった、などの理由で避けました。

早速ダイナミクスの試用版を取り寄せてみました。

最初の画面を開いてみました。F2、F3とキーを押す。カルテの表紙、診療、計算、こうした画面切り替えをスクロールというテクニックで実現しているので、超 高速。参りました。コロンブスの卵です。多少プログラミングは出来る私ですがこの発想は出来ない。吉原先生(ダイナミクスを開発なさった先生)は天才だ。でも拡張子が・・・MDE?

MDEというのは、データベースの中身が覗けない拡張子です。MDBが良いなあ。

TEL「あの〜、製品版はMDBですよねえ。じゃないと困るんですけど・・・」

そうしたら30分もしないうちに吉原先生ご自身からTEL

「そりゃ〜、製品版はMDBだけども〜、これは試用版だからの〜」

私直立!「大変失礼いたしました!早速導入させて頂きます!!!」

という事で、1時間後には申込書に判子を押して投函しておりました。




それが平成17年の12月中旬の話。

富士通からもらったデータで、頭書き、病名の移行を完了。外字だとか、ちょっとした困難はありましたけれどもね。

数日間、平行して入力。ばっちり合っていない、、、継続管理加算?なんだこりゃ。

富士通の機械では自動では計算してくれなかったんですね。今まで随分損してました。そういうのも自動で計算してくれるんですか。すごいレセコンですね。

本当は4月から稼働させようと思ったのですが、1月から結局全面的にダイナミクスに切り替えました。だってその方が得ですから。

これで私のダイナミクス人生が始まったのです。